縦書き命2013/11/19 22:21

26日公演の劇場打ち合わせでした。
通称“小屋打ち”と業界では言いますが、
要するに貸すほうと借りる側の顔合わせを
兼ねた打ち合わせの会議です。

ホールでも劇場でもそうなのですが、
大切なのは毎回完全撤収で終わる事。
これは次の日の為の準備でもあるのですが、
スペースを貸している側からすれば、
毎日入る違う方々にニュートラルな状態で
お貸ししていくという事です。
例えばホテルの客室でもそうですが、
前の方が使用した片鱗など微塵もなく、
奇麗に部屋を掃除している以上に、
既に迎える準備も整っているからこそ、
借りる側が気持ちよく部屋に入れる。
このホスピタリティは、
ベッドメイクの話だけではなく、
劇場でも同じ事です。

まっ白な紙が提供されるからこそ、
自在な色と模様で書く事が出来るもの。
劇場空間は紙を留める画板のようなもの、
必要以上に個性があってはいけないのです。

日常的にあらゆる貸しホールに出向き、
公私問わず劇場を使わせてもらいます。
迎える側も懐広いモテナシですから、
使用させてもらう側も、
粛々と頭を垂れて門を潜るのが
やはり礼儀というものなのです。

今日は小屋打ちでしたから、
まずこちら側の誠意を見せながら、
最高の公演に協力して頂きたいと、
お願いをする会でもあるのです。
資料に書き込み時間を整理し表にして、
希望の使い方を図にして持参します。
相手方も丁寧な対応。
今回はクラシック作品でありながら、
場所はレストランライブハウスなので、
全て音響はPAされて耳に届かせますし、
この時点でマイクセッティング含め、
我々の非日常であるわけです。
微妙なセッティング如何では、
クラシック好きの毎度のファンからは
お叱りも受けかねませんので、
丁寧かつ繊細な音響打ち合わせ。
ましてや私の声は楽器のように扱うので、
器楽とのバランスの相談も必要。

照明も必要以上には凝らなくても、
必要な事はやらないといけません。
照明如何で四季折々の光の満ち欠け、
時間の流れ、感情の変化まで自在に
映し出す事ができるのですから。
今回は演出家を配置していませんので、
この辺りのセンスは最終的にはお任せ。
私が書き込んだ基本プランに添って
今日はお話しをしました。
最後に照明プラン・オペレーターから、
「台本読み込んでおきます。
それでプラン詳細を考えてみますので」
と、とても嬉しい言葉。
そのあとに、
「縦書きの台本で嬉しいです!
こうじゃなきゃやっぱりダメですよね」
と言ってくれました。
そうそう、そうなのです。
台本が縦書きなのは普通かと思ったら、
最近は平気で横書きを渡す方も多いみたい。
この台本も縦台本なのですが、
さらに細工をして照明用台本にしました。
こんな気持が解って乗ってくださるのが、
裏方気質の皆さんの嬉しいところです。
これで照明は任せて大丈夫って事です。

あぁ肩の荷が半分ほど下りました。
やはり顔を見合わせて話をすることは、
とても大事ですね。
とてもよいスタッフワークになりそうです。

今日のスイートベイジル外観写真です。
後ろの六本木ヒルズが要塞みたい・・・。
しかしながら芋洗い坂のこの付近、
昔の風情も、まだすこ~しありますが、
六本木ヒルズ開発の爪あとが、
今になってもあちこちに歪んで見えます。
帰りは反対の7丁目の路地を歩きながら
利便な地下鉄の駅まで歩きましたが、
開発されていない最後の地帯、
徒歩3分の六本木昭和にホッとしました。
こういう下町風情と路地みると、
なんだか私は頬が緩んで嬉しくなります。
縦書き台本を持ってきた奴にニヤリとした
彼の心情と同じようなモノかもしれません。
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