座談会2020/07/04 11:03

そのうちに詳細お知らせをいたしますが、
とある老舗音楽専門誌での座談会でした。

様々な団体が工夫し、
試み、模索し、苦心している様子を
席を並べながら聞きましたし、
手前共の様子も発言させていただきました。

内部事情やそれぞれの秘策もあるでしょうから
普段はなかなか手の内を明かさないのが
この界隈の常識でもありますが、
昨今の共通の災害でもあるコロナに関しては、
鍔迫り合いしている場合ではなく、
とにかく耐え忍んで抜けて行かなくては
春が来ないのである。

正式な座談会の後、
お茶を飲みながら少し楽しい四方山話。

こういう時間が楽しいですね。
また報告いたします。

FM生放送2020/07/05 21:05

隔週で番組がある<狛江クラシックラウンジ>ですが、
毎回テーマを決めて、曲を持ち寄ります。
3人でパーソナリティをしていますが、
相変わらず打ち合わせは直前でも、
不思議なことにほぼ選曲は被らずにいくものです。

今日のテーマは「七夕に因んで」でした。
彦星と織姫をテーマにした古典作品なら、、
洋楽は厳しいでしょうが、
そこは柔和に発展させていきます。
今日は、そこから「空、星、愛」をテーマに。
こうなると100万曲あるでしょう。

大体一人3曲か多くて4曲ですので、
バランスよくいくのですが、
私は以下の3曲。

・フランツ・レハール作曲
 オペレッタ<ルクセンブルク伯爵>より
 「星をつかもう」
・リヒャルト・ヴァーグナー作曲
 オペラ<タンホイザー>より
 「夕星の歌」
・ロベルト・シュトルツ作曲「Ich liebe dich!」

こういう選曲は楽しいですね〜。
因みに前回は、「美と音楽」であり、
その前は「食事と音楽」でしたが、
これらはこれらで楽しい妄想選曲でした。

クラシックの選曲は、様々関連やこじつけでも
選ぶでしょうが、やはり聴く意味を持つと、
個人で聴く時でもきっと楽しいものです。
気分で決めるだけではなく、意味合いですね。

レハール選曲は、
彼の生誕150年にまだ拘っているのと、
この曲が主役のルネとアンジェールのすれ違いの恋心を
歌うとっても美しい背景があること。
放浪の男性が金が欲しさに偽装結婚した相手に、
本当に惚れてしまが、身持の硬いアンジェールは、
なかなか思い通りにならない。
遠い星を掴む様な恋物語、、、と歌うものです。

またワーグナーの選曲は、
タンホイザーのバリトンアリアの「夕星の歌」が、
彼のアリアの中でも最も美しいと思っています。
不甲斐ない旦那の人身御供となって自害する奥さんを
哀れんで、旦那の親友が歌うという、
恋人同士ではない<星にも叶えることが出来ない儚さ>
を歌う歌でもあります。
100年前1920年に山田耕作の指揮で日本初演が
行われたオペラというのも大事な選曲理由です。
「夕星」は「ゆうづつ」つまり宵の明星、
重要な旦那タンホイザーが溺れた快楽の金星を表します。

シュトルツ選曲!
もうこれは説明入らない、バカに一途な愛の歌です。
シュトルツはウィーン伝統を持った最後の音楽家、
と言われますが、1890〜1975の生涯という長生きで、
クラシックというより、オペレッタ、映画、ミュージカル、
様々な娯楽に近い音楽を提供し2000曲以上描いています。
メロディーの美しさ、特に切ないハーモニーを添わせれば、
彼の意義に出る者はいなかったのでしょう。

空の美しさ、星を見ても何も危険はないですから、
皆さんも素晴らしい七夕をお迎えください!

僅かで深い歴史2020/07/07 10:51

1人でフラっと訪ねるお店が
あちらこちらの街に有るのですが、
何処も大抵永くやっている個人店です。
仕事の関係で昔から伺っている場所、
地元で週末や日曜の昼にでも寄る店、
一見で暖簾を潜り舌鼓を打つ事もある、
居酒屋とカウンターバーが殆どです。

この春の疫病では
笑顔の似合う主人たちが心配で仕方なく、
休店経費を勝手に試算してはヤキモキと
余計な心配ばかりを重ねました。

最近では少しずつ緩和が進み
世の中も新しいやり方を模索しているので
時間があると少しずつ訪ねるのですが、
難儀な台所事情を奥目にも見せずに
何時もの様に淡々と手先を動かし
処狭し立回と愉しい話題で気を利かせます。

噺が積もっていてもいくつも花を咲かせず
減らした席に遅れ常連が座れる様長居をせず
ゆっくり扉を開けながら惜しんで振り返り
ようやく再開できた喜びを噛み締める。

小さなお店の中に大切な歴史が有りますね。

poco a poco 、、、2020/07/09 16:50

少しずつ、少しずつ、
ゆっくり、ゆっくり、
足下を確認しながら、
ぬかるみに足を取られぬように、
慎重に、確実に、
歩みを進めていきます。

どんな確認をしたか、
その都度、度々と振り返り
軸足が緩んでいないか、
その先で動転してしまわぬか、
周りは頷いているかも見回して
歩みを進めていきます。

靴の泥を拭って、
もう一度左側から見回してみよう。
目を瞑って明日の来客を想像しよう。

もうすぐ、もうすぐ。

再開に向けて2020/07/10 09:25

自粛期間の時には、私たちの辛抱の成果で
数字が下がっていくのを頼もしく拳を握りました。
このところの感染者の発表を見るのは辛いです。

されとて毎日5万人も罹患していく国もあるのは
横目で見ていても背筋が凍ります。
さる都知事候補者のスローガンで書いてあった
コロナウィルスが風邪の様なもので済まされるなら、
日に10回も鼻を噛むか、微熱で学校職場を数日
休むことで治る様なことでしょうが、
どうやらそうはいかないですよね。

インフルエンザで死亡する方が流感時の毎月1000人以上
出るのもこれまでとしたら、
このコロナへの対処は何が正しいのか、
訳が分からなくなります・・・。
だがしかし個人差で凶暴化するウィルスですので、
罹患しないことが風邪、インフルと同じく良いのです。

経済も動かなければ困るし、
私たちの文化芸術の世界も朽ちては困る。
生きながらえるために頭を隠しやり過ごせば
時が特効薬を作って解決してくれるでしょうが、
その時に再生しようと思っても、
沈んでしまった世界に生きる価値を見出せるのか、
という鬩ぎ合いを常にしている気がします。

オーケストラは少しずつ動き出しています。

安全なテリトリーを少しでも増やし、
その制約の中でもできること実施するのが使命であり、
自らを助く経済活動でもあります。
再開とも言い切れず開放でも全くないのですが、
貨幣価値や物価、などの経済対価をも凌駕するのが、
文化芸術の真髄と信じて進むしかないのです。
私にはこれしか生きる術なないです。

さて弱音はなしで前に進みましょう。

ダダ/ナチ2020/07/12 21:01

こればかりは仕方ないのですが、
大昔から書籍と楽譜と音源が増える一方でした。

それでも昨今の時代の流れから
新譜CDを買う機会が減ったので、
音源は昔録音された資料を
必要な時に探して購入する程度です。

譜面もフルスコアの新譜を必要とすることが
ほとんどないので、
古典から後期ロマン派に至るまでは、
一応のものがある気もしますし、
オケにあるものはそこでも参考にできるので、
譜面を買う機会も明らかに減っています。

だがしかし、書籍・・・。
こればかりは減る訳がなく、
増える一方です。
1つを調べて研究すれば、切りのない探究に陥り、
初版で無くなっている本を探し回ります。
これらは、参考書籍の巻末<参考資料>を見ると
実に様々な書籍が紹介されているので、
自分の持っているものと知らないものも
一目瞭然です。

敬愛する平井正先生のベルリンシリーズの
3巻セットは、以前から参考書籍として
非常に詳細な記述がわかりやすい資料ですが、
この度ようやく3巻揃ったのは、
1993~94年に掛けて刊行された
ダダ/ナチ<DADA/NAZI>
1913年から1932年までのドイツの芸術文化、産業
そしてナチスドイツの台頭に至る歴史を
追っています。

平井先生の素晴らしいところは、
歴史を庶民や大衆の目から見えるところに置き、
芸術文化、また退廃的と片付けられた世界まで
真っ直ぐに見つめながら詳細まで拾ってくれるところ。
クラシック音楽という限りあるジャンルでは
誰も見ていない、録音、映像も、
写真さえ残っていない200年、250年前の物を
文字と譜面から想像して作り上げたりしますが、
19世期末以降、20世期というのは、
これらが視覚的にも聴覚でも再現できますから、
時間が過ぎてしまった日常が寄り添うと、
さらに事象が証言されて、正当性があります。

500ページもある書籍を端から読んでいる時間は
とてもないのですが、
必要な時に捲ると必ず答えやヒントがあるので、
頼るべき私のバイブルの様なシリーズです!
ウィキペディアでググって終わりにする事では
済ませないことが、私にとっても課題です。

三島の映画2020/07/15 23:29

夕方から時間が出来てようやく観られました。
「三島由紀夫vs東大全共闘」

左翼の学生運動として活動をしていた東大全共闘の集会に
シンポジウムとして招かれた右翼思想の三島由紀夫が、
如何なる発言をしたかというドキュメントです。
1968年のこのシンポジウムから1年半後、
市ヶ谷の自衛隊駐屯地で自決するまでの話ですが、
有名なドキュメントの再編集と、
このシンポジウムを主催した学生代表、
三島を支えた彼の義勇団ともいえる楯の会の方々の
証言を挟みながらの息もつけない90分。

2月から観たかった映画を
ようやく見ることが出来て本当に良かった。
とりあえずの備忘録です・・・。

村上春樹新作2020/07/21 23:07

書籍を数多く買いますが、
大抵は研究所であったり、資料なのですが、
平積みを見渡しながら本屋を歩くのは楽しいです。
久しぶりに書店の一番入り口近くに積んである
新作小説を買ったのではないでしょうか。

村上春樹/一人称単数

なんともソソるタイトルですが、
この装丁のイラストもとてもよいですね。
作者の星野徹也さんは漫画家ですが、
イラストがとてもよいですね。

この本は8作の短編集で購入した日に一気読みですが、
村上春樹氏の独特の心理描写が楽しく、
数日経ったらもう一度読もうと思うのです。

じっくり読んで二度と読まない小説もありますが、
読了した後にじわじわと言葉を思い出して、
もう一度その章を開いてみたり、
気になる会話を読んでみたり、という本もありますね。

お勧めです!

文藝春秋社創刊1500円+税

5ヶ月ぶりの公演2020/07/23 23:17

2月26日より公演の自粛に入り、
感染拡大から公演を再開ができずに春が過ぎ
初夏、梅雨を迎えています。

6月に入り、毎日発表される数字は
少し好転することを期待させましたが、
全ての協力の結果であり、経済、音楽をはじめとする
専門業界などが発展を止めた成果であったということは、
7月以降の数字の上昇を見ると身に染みて感じます。

報道される他国に見られるシーンですが、
自由さと感染のリスクを取引したような生活は
日本人の感覚ですとなかなか馴染みませんが、
そんな私達でさえ、
動かなければ終わってしまう恐怖に似た感覚があり、
あの自粛に戻りたくないというトラウマもあります。

だがしかし時代を乗り越えるためには、
ウィルス達の共存を考えなければいけないと思うのは、
否定すると、乗り越えるための闘争心も身体に宿る武器も
手放してしまう怖さだと思います。

生身の人間は弱いですので、未知の敵は怖いですし、
自分の体調や戦闘能力さえ自分でしかわからないので、
自分の身は自分で守るしかなく、
社会に全てを添うことは非常に勇気もいることです。

そんな今ですが。

5ヶ月ぶりの演奏会でした。
クラシック音楽ですので、お客様も年齢層は高めですし、
手を振り上げる事も、ストンピングもなく、
静かに聴く演奏会であることは世界共通です。

この数ヶ月、世界中の情報を集めながら、
他団体の検証実験、他国の公演に対する対策、
国の指針、東京の情報、関東の対策・・・
実にたくさんのことを考えながら、
安全確保を最優先に開催いたしました。

たくさんのお客様の拍手、声には出さない声援、
心の中から聞こえてくるブラヴォーの賛辞もあり、
本当に嬉しい日になりました。

浮かれた気分は一寸もないのですが、
ほんの少し取り戻した日常だけで、
エネルギチャージをした気分です。

明日がまたよい日になると信じて進みましょう。

村上春樹のクラシック音楽2020/07/25 09:44

つい数日前に村上春樹氏の新刊単行本の
『一人称単数』を読んだばかりだったので、
何度も内容を思い返していたのですが、
ちょっと思いついた事の備忘録です。

村上ファンには周知の通り、
彼自身が早稲田大学の在学中にジャズバーを開いたほどの
音楽ファンでもあるので、
作品に反映されていても何も驚かない訳である。
加えて書き留めれば、
彼のデビュー作のきっかけも極めて有名な通り、
生粋の野球ファンでもあり、音楽と野球に通じるところが
私にとっても読まずにはいられない理由でもある。

ジャズに加えて、登場するクラシック音楽の多さが
流行も生み出してしまう人気作家の面白さですが、
生業としている者にとっては応援もしたくなるのです。

例えば近年の話では、
『IQ84』で重要なキーミュージックにもなっていた
レオシャ・ヤナーチェク作曲の<シンフォニエッタ>が、
書籍の人気と共にCDの売り上げも急上したりしました。

こう言ってはなんですが・・・
<シンフォニエッタ>はクラシックファンでも日常的にも
聴くことはないし、演奏家でも頻繁には演奏しない。
でもこういうクセの効いた曲を選曲する辺りが、
彼の造詣の深さであり、文学に転化した時の料理です。
他にも『海辺のカフカ』にはL.v.ベートーヴェンの
ピアノトリオ第7番「大公」が主人公の人生を変えてしまう。

そう、人生を変える程の重要な音楽として
クラシック音楽が使用される比重の高さが素晴らしい。

さて『一人称単数』の備忘録に戻ります。

雑誌<文學界>への2年間の書き下ろしから纏めた8編の
短編集なのでこのタイトルもその一つです。
「品川猿の告白」という編があるのですが、
詳しいシノップシスは話さないほうが良いとして、
猿が日本語で噺をして主人公と会話するのです。
この猿が世話になった主人の影響でA.ブルックナーを好み
とりわけ7番の第3楽章にはいつも勇気づけられると曰う。
、、、面白いです!3/8のScherzoに合わせて猿がニヤリ
と微笑みながら体を揺する。
確かに軽快なリズムと爽快なハ長調の響きは、
教会のオルガン室に引き籠り殆ど出なかったブルックナーに
してはあまりにも精力溢れる鼻息の様でもあります。
サマーウールにしても暑苦しそうな少しサイズのデカい
ヘリンボーン織ズボンが落ちそうなのを押さえて体を揺すり、
書き上げた譜面を頭で復唱しながら、
どこからか侵入した裏山の猿とアントンが踊る滑稽さは、
私でも勇気づけられそう・・・。

他の編にも、
ジャズ、ビートルズに彩られる作品が並びますが、
もう一つ『謝肉祭(Carnival)』という作品がありまして、
この中にも特徴的なクラシックを取り上げます。

クラシック好きの主人公とF*という女性が仲良くなる過程に、
こんな会話があります。
1曲だけいわば無人島に持っていく曲を選ぶなら。
すると主人公は、
「シューマンの謝肉祭」と僕は最後に思い切って口にした。

、、、ううむ。
この曲を選ぶこと自体面白いですよね。
<謝肉祭>は初期の傑作として分かりやすい20曲から
成り立っていますが、小品集ゆえとても聴きやすいです。
小説の中で語られている様に、歴史的に有名著名な名手が
皆弾いている訳ではない、いわば庶民的名曲。

私の<謝肉祭の>楽しみは、バレエ作品としてでした。
バレエ・リュス(ロシアバレエ団)の代表曲としても
編曲されたこの曲を以前バレエ公演で振っていた時、
著名なカルサーヴィナが踊った話も教えていただきました。
まさにカーニヴァル!という仮装行列と仮面舞踏の様に
奇想天外な音楽集を大変楽しいオーケストレーションで
バレエ音楽編集していたのを思い出します。

村上春樹さんの本を読むとクラシックファンや、
生業としている人はもしかしたら反感を持つ方も
いるのではないかと思うのですが、
隣り合わせ背中合わせである音楽と文学が、
活字の中で対話をしながら頭の中で音楽を鳴らし、
立体的に劇作品の様に展開をしていく様子が、
私は大好きなのです。

あら、いつのまいか備忘録程度のはずが、
長ったるい噺になってしまいました・・・。

失礼。
カウンター