クララとフリッツ2005/12/26 09:30

24日は、「くるみ割り人形」の本番でした。
イブの夜に、人形を贈られたクララが見る夢は、
楽しくて、少し怖くて。

1892年の初演ですから、まだ113年しか経っておらず、
古典中の古典と思っていても、クラッシックバレエの
歴史はそう古くないものです。
いつも思うのですが、スコアを見ていくと、
くるみ割り人形も、白鳥の湖も、眠りの森の美女も、
書かれている指定のテンポと、
現代の振り付け演出のテンポが全然違います。
チャイコフスキーの真意を損ねているものなのか、
彼がそこまで考えられずに書いていったのか、
どの文献を探しても、なかなかそこの問題解決までは
たどり着けませんが、舞台上は考えずに、
スコアだけたどっていくと、調性、テンポ、拍子が
実によく考えて書かれています。

今回の演出は、1934年以来観る事の出来なくなっている、
イワーノフ版。音楽が始まると、ほぼ絶え間なく、
全てが進行します。
素晴らしい踊り、いつもの様にお客様は御祝儀の拍手を
おくりますが、拍手を断るかのようにドラマを進行させていきます。
曲間のマイムも殆ど無く、全てはオペラのようです。
そう、イワーノフ版は言葉の無いオペラ、
全てを踊りで表現するステップオペラです。

1幕2場、<雪の森>での雪の精の踊りは、
38人ものダンサーが総踊り。
本来のドラマとは関係ないのでしょうが、
雪も憎かろう極寒の地で、
クリスマスの夜に、雪片に宿る精霊の踊りは、
冬である事を喜び、クララばかりか、聴衆も幻想的な
世界へ誘なったのでしょうし、この美しきワルツは、
チャイコフスキーが、ここから書き始めたといわれる意味が、
よく解ります。彼の優しさ、恐れ、憧れ、全てが、
音楽の中に濃縮還元です。

クリスマスに「くるみ」を観る事は悦びですし、
しかしこれは、演奏家にとっても最高の時間。
観てよし、演ってよし、聴いて良し。
よしよし尽くしの最高の作品。

そんな次の日の25日は、
お祝い事で司会をしました。
サプライズ、サプライズで、準備して仕掛けた甲斐もあり、
新郎新婦も涙、お客さんも涙、駆けつけた30人のオケも涙。
みな料理に手をつける事も忘れ、宴に心を奪われていました。

おめでとう、夫妻。
御苦労、同志。
ありがとう先生方。

24日も25日も、私は少しだけ高い所から、
皆さんを見て、喜ばしい笑顔と美しい涙を見て、
クリスマスを満喫いたしました。

くるみ終わって片付けて、
外に出たら、東京タワーのイルミネーションが、
お疲れさん!と、肩を叩いてくれました。
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