譜面至上主義 ― 2014/06/02 23:19
大きな公演が近づくと必ずやってくるのが
譜面を奏者に送るという作業。
大小に限らず、小さな公演だって誰かが
同じ事をしますが、
譜面を揃える作業は大変なものです。
これが既製品、つまりベートーヴェンの
交響曲でしたら苦労はなく、
指揮者の希望の版を前もって注文し、
来たものを郵送してしまうだけです。
然し交響曲だけの演奏オケなどないもので、
細かな曲や新曲に到ってはパート譜づくり、
また数十年ぶりの邦人曲の演奏となると、
ライブラリアンの仕事量は膨れ上がります。
正確に言えばベートーヴェンであっても、
指揮者によって微妙に違いがあり、
以前経験しているものでしたら、
好みを再現しておかなければならず、
実は簡単に手放しにできる譜面など、
本当はどこにもないものなのです。
これはきっと演劇に於ける台本、
もちろん映画でもそうでしょうが、
文芸的な拘りを活字に頼る世界と、
同じような事だとは思っています。
バレエの作品となると、
結構な苦労が過去ありまして、
思い出したくもないほどのトラウマ。
“譜面の発掘”に近い考古学的な作業で、
2カ月も費やした経験が震えます・・・。
でもその苦労を知ると大抵の事は楽であり、
譜面を直したり複製して製本したりすれば
次第に譜面を扱う奏者の気持ちになるもの。
大事に取り扱いたいと思うのです。
ときおり自分が振っている公演の準備でも
「そ、そんな事からやっているの?!」
と聞かれ驚かれ呆れられる事も多いほど、
譜面への執着心は強いのですが、
でもこの基礎作業は音楽と譜面の因果関係や
作曲家の意図が見えたりするものなのです。
全体像を見ることができるフルスコアは、
いわば全体の設計図であり、
出来上がりを想像する可能性を秘めた、
指揮者の必携マニュアルでもありながら、
実はパート譜を直視するのも大切です。
どの職種にも足で稼ぐ仕事があるように、
パート譜から生産者の気持ちが理解できたり、
構造内部の部材から発見があったり、
隣り合うパートさん(・・・。)の心理を
読めたりもするのかもしれません。
アマチュアオーケストラの方々を見ると、
譜面の扱いが乱雑で驚嘆することがあり、
演奏を共にする者として残念に思います。
A4版に縮小して持ちやすくするのは、
時代の流れで文庫本的な発想の許容範囲。
更なる4つ折りの折線やクシャクシャの皺、
角が擦れて切れている無造作な収納癖、
本番前日に製本するという無頓着にも、
指揮者として溜息が出てしまうものです。
いやいやプロでもこういう人は居る。
楽器が心臓ならば、譜面は魂。
心技体の根源の扱いで勝負が見えてしまう。
譜面は大切な傍らの友です。
譜面を奏者に送るという作業。
大小に限らず、小さな公演だって誰かが
同じ事をしますが、
譜面を揃える作業は大変なものです。
これが既製品、つまりベートーヴェンの
交響曲でしたら苦労はなく、
指揮者の希望の版を前もって注文し、
来たものを郵送してしまうだけです。
然し交響曲だけの演奏オケなどないもので、
細かな曲や新曲に到ってはパート譜づくり、
また数十年ぶりの邦人曲の演奏となると、
ライブラリアンの仕事量は膨れ上がります。
正確に言えばベートーヴェンであっても、
指揮者によって微妙に違いがあり、
以前経験しているものでしたら、
好みを再現しておかなければならず、
実は簡単に手放しにできる譜面など、
本当はどこにもないものなのです。
これはきっと演劇に於ける台本、
もちろん映画でもそうでしょうが、
文芸的な拘りを活字に頼る世界と、
同じような事だとは思っています。
バレエの作品となると、
結構な苦労が過去ありまして、
思い出したくもないほどのトラウマ。
“譜面の発掘”に近い考古学的な作業で、
2カ月も費やした経験が震えます・・・。
でもその苦労を知ると大抵の事は楽であり、
譜面を直したり複製して製本したりすれば
次第に譜面を扱う奏者の気持ちになるもの。
大事に取り扱いたいと思うのです。
ときおり自分が振っている公演の準備でも
「そ、そんな事からやっているの?!」
と聞かれ驚かれ呆れられる事も多いほど、
譜面への執着心は強いのですが、
でもこの基礎作業は音楽と譜面の因果関係や
作曲家の意図が見えたりするものなのです。
全体像を見ることができるフルスコアは、
いわば全体の設計図であり、
出来上がりを想像する可能性を秘めた、
指揮者の必携マニュアルでもありながら、
実はパート譜を直視するのも大切です。
どの職種にも足で稼ぐ仕事があるように、
パート譜から生産者の気持ちが理解できたり、
構造内部の部材から発見があったり、
隣り合うパートさん(・・・。)の心理を
読めたりもするのかもしれません。
アマチュアオーケストラの方々を見ると、
譜面の扱いが乱雑で驚嘆することがあり、
演奏を共にする者として残念に思います。
A4版に縮小して持ちやすくするのは、
時代の流れで文庫本的な発想の許容範囲。
更なる4つ折りの折線やクシャクシャの皺、
角が擦れて切れている無造作な収納癖、
本番前日に製本するという無頓着にも、
指揮者として溜息が出てしまうものです。
いやいやプロでもこういう人は居る。
楽器が心臓ならば、譜面は魂。
心技体の根源の扱いで勝負が見えてしまう。
譜面は大切な傍らの友です。
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