電車女2005/08/09 22:43

電車に乗ってつり革につかまりながら、車窓に気を取られていたら、
どうやら、眼下の女性が化粧を始めました。

パフを取り出し、ファンデーションを
器用に顔にのせていく作業から、
始まりました。左官のようなパフ使いです。
マスカラには、3駅を要しました。丹念に塗り、ビンに差し戻し、
また塗り、7~8本のまつ毛が、
一本の髷(まげ)ののようになっています。
髪結いさんみたいです。
大銀杏とか、いなせなまつ毛になっています。
しかも、不思議なモノを取り出しました。
楊枝位の長さで、先が傘の柄のように丸まった、
緑のプラスティックの棒です。先は尖っています。
これを先程の大銀杏に差し込みながら、調整しています。
ふ~ん、そう使うのか・・・と思ったら、鼻の頭も掻いています。
チークの塗り方は芸術的でした。
私の趣味だったら、もう少し、
ピンクサーモンのような色にするところですが、
極めて赤いチークを小指ですくうと、
一気に左右の頬に塗りこみました。
3回転半、キッカリ回すと、オテモヤンがら貴婦人に変身です。
私は、うなりました。
手に何か、透明なジェルを取ると、掌全体に馴染ましています。
あ~、手を大事にしているのか、と思いきや、
髪に撫でました。12本ずつの髪が、すこーし毛羽立ち、
プリンのような2色のショートボブの毛先が、自己主張しています。
最後には携帯を取り出して、鏡では見れない全体像を、
カメラの自分撮りで、確認しています。
前髪を理想の位置にずらし、最高の仰角35度で、
今日一番の笑顔を確認すると、ちょうど下北です。
急ぐ様子もなく道具をキッチリ鞄に詰め、私の顔も見ずに、
降りていきました。 電車の職人です。

昔見た職人を手短にもう一人。

年の頃50代半ばの女性で、
ひざ下までのストッキングを履いていたのを、
とてもよく思えている方でした。
デパートの紙袋と、ビニール袋を右手一杯に下げたストッキンは、
私の目の前に座ると、始発駅のその電車が発車する前から、
なにやらゴソゴソしだし、足元を広くすると、
新しいポリ袋を取り出し、底を広げると、
ポリバケツのような形に置きました。
しばらくすると電車は走り出しましたが、
意に介す様子もなく作業は進み、
次に、ストッキンは、別の紙袋に手を袋に突っ込むと
その中から、キヌサヤを取り出し、
深爪したような指先でしたが、とても器用に、
筋を引っ張っています。そして、角を綺麗にプチンと取ると、
足元のバケツ袋に放り込みます。
何本も何本も、夕食の下ごしらえは続きました。
電車の職人です。
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