1914 年2020/04/15 15:35

1914年という斬新なタイトルですが、
私が追いかけて何冊も読んでいる海野弘さんの著作。
私から見ると‟神出鬼没“な神々しい学者さんです。
海野さんの専門の時代と考えると、
19世紀半ばから20世紀の西欧芸術に亘る範囲。
と考えて専門的な部分をありがたく読んでいますが、
私が出会った1930年代の<音楽の専門>の書の他に、
専門分野の穴から覗く世界史の書籍が多く、
「秘密結社の世界史」「陰謀の世界史」など、
ついて行って後ろから覗きたい書籍がたくさんあり、
しかもこれらの内容の引用元の選択も上手く、
もちろんそこから見える世界の解析も秀逸であります。
また世界観だけではなくて、日本における歴史の面白さ、
俗物な平民の話題からセクシャリティに及ぶまで、
非常に範囲が広くて、執筆量を考えても神出鬼没としか
当てはまる言葉がない方なのです。

さて本題の1914年。

6年前の2014年、非常に重要な年を迎えたと思い
この年に様々な本を読み漁りましたが、
この書籍も5月には世に出ていたのに気付かなかった。

私は1914年から100年経った現在の日本と世界が、
100年経って何がどう変化したかを気にしていました。
2014年は第一次世界大戦がはじまった年ですが、
6月28日のサラエボでオーストリア皇太子が暗殺された話が
発端となっている事を知っている方も多いでしょう。
戦争の内容というより、大事なことは、
終戦の1918年までの4年間で世界の全てが、
表裏ひっくり返ってしまった事、
このことは政治と経済ばかりでは無くて、
文化芸術、特に表現者である作家、作曲家、創作家、
様々な方の創造意欲を削いでしまったともいえます。

私たちが普段演奏したり聴いたりと、
愉しませていただいているクラシック音楽の99%は、
1918年までにできているものかもしれません。
勿論そこから106年の間にも新しい作品、
芸術的な価値を認められている創作物はありますが、
なにせ世界はその後第二次世界大戦へと向かいますし、
1918年以降に生まれた作品は、須らく「その後」という
形容詞で語られるべき4年間の異次元であったでしょう。
全ての転換期であった2014年という境目は太く硬く、
しかも脆く、また見方では目を背けたいのも事実です。

海野さん、先生とお呼びいたします。

私も同じことを考えていてこの本読んで驚きましたが、
様々な方が言われている100年周期という可笑しさと怖さ。
およそ3世代で100年になり、
またおよその人命は100年に到達せずに絶える。
100年と言う単位は、
人が知り得る事が出来ない大きなローテーションでもあります。
1914年の世界の転換期を知る事は、
そこからの100年の振り返りであり、
今迎えている21世紀の今後の100年を考える元でもあります。

とても辛いウィルスが蔓延していく現在、
この事がはるか昔100年前から想像できたことか。
いわば戦争のように、周期的に起きたものなのか。
だとすると我々地球人は、そろそろ覚悟を
決めなくてはいけないのではないかとも思う。
そんなつもりで読もうと思って買っていた本ではないが、
世界の果てが見えるような現在、
100年前の現在を記しているこの本は雄弁に語っている。

作者 海野弘
平凡社
2014年5月発刊
新書

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://hanatsubaki.asablo.jp/blog/2020/04/15/9235639/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。

カウンター