ジパングったら。2007/01/14 23:00

舞台に立った事がない方は、
舞台から見る客席はどんなものか、
想像がつきますか?

たとえば、舞台の下見に出掛けた時、
舞台中央から見る誰もいない客席は、
満員のお客様は笑顔であるか、
鋭い視線でブーイングを飛ばす輩なのか、
まだ来ぬ客人に、思いを馳せるものです。
またある演奏会、演奏終了の瞬間には、
小さなミスでも自らを責めてしまい、
正面向いて胸を張れなかったりするのです。
そんな期待と評価を下す、
恐ろしく素直で、正直な「お客」とは、
舞台から見てると、
お代官か、仁王様、はたまた如来様なのです。

トロンボーン・クァルテット・ジパングの公演、
無事終了して参りました。

演奏4人の精鋭は、光り輝き、
客席の若者たちは、興味と羨望、
驚きと賞賛の目と耳で、見つめます。
恐れも驕りなく、大胆で謙虚、
繊細な勝負師たちの演奏は、
1曲ずつ確実に平らげ、
申し合わせと積み上げた稽古の実績を、
客席に届けていくのです。

2ヶ月あまりの期間、
主宰の吉川氏と企てながら、
2部の演出を手掛けました。

20年前の毎日が蘇るような私たちの会話。
果敢に攻めて、存在を必ず記していきながら、
昼も夜も徘徊し、思考錯誤しながら、
常に、論議と笑いの肴は、酒と友。
20年前は、上下関係がありますから、
「友」なんて事は口にはしませんが、
尊敬し、敬愛する人間には、上も下もないものです。
信頼できる人間関係を加えて協働できる喜びは、
薄っぺらなデジタル社会が1億年かけたって創れない。
超速で変換していくこの世と思考の中で、
“変わらない事がどんなにすばらしい事か。”
これは魂の欲求に応える己の精神に他ならないのです。

ドラマは、面白い。
音楽も素晴らしい。
2500年に創造された、演劇、音楽、舞踊の原子。
変わり得ぬ魂の欲求は、どんな時代にも、
届くものだと、心より実感した日でした。

私のつたない台本で出演していただいた、
関さん、布施さん、心から感謝しています。
協力していただいたトリフォニーホールの方々、
ジパスタの方々、身内の方々も有難うございました。
舞台挨拶で出演者と並んだとき、
客席の皆さんの拍手の暖かさに
ジパング8回の軌跡を肌で感じました。
頭を垂れ、自分も負けまいと心に誓いました。

ジパングの皆さん、吉川君、ありがとう。
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