HIBARI2015/06/14 23:43

NBAバレエ団公演「HIBARI」
を観て参りました。
年に数回指揮をしていますので、
ダンサーやスタッフの皆さんも懇意で、
新作舞台は大変興味深く見られます。
オケではない録音での公演なので、
遠目から客観的に観られるのが良いのです。

HIBARIとは、
もちろん大スターの美空ひばり。
昨年もアメリカから来日していた
振付けのリン・テイラー・コーベット氏が
滞在時に彼女のドキュメンタリー番組を
偶然見て、さらに歌にも大いに感動し
トリビュート・パフォーマンスを
創るべきと提案した事から始まった。

この美空ひばりの舞台を創作する話は、
準備の段階から聞いては居ましたが、
多少心配もしていました。
だってヒット曲には演歌も多いし、
艶っぽい歌謡世界をダンス化するという
想像があまりつかなかったので・・・。

愉しく面白い舞台でした。

宝塚宙組トップスターだった和央ようかさん
のナビゲーションは上手に演出され、
彼女の歌と声はひばりさんのキーに
よく合いました。
そして彼女、歌もとても上手かったです。
美空ひばりをこの様な舞台で歌う緊張感は
尋常ではないと思われますが、
稽古も積まれたのでしょうとても上手。
私は宝塚の歌い方(台詞もね)が、
全て良いとは思わないのですが、
トップスターの気品と一人の演者として
鍛錬した結果は堂々として優雅であり、
今回のゲストとして最高ではないでしょうか。

ダンサーも長期に亘って稽古した成果が出て、
とてもよかった。
美空ひばりの天性と努力という両極美は、
音と映像も駆使した華やかな舞台と、
稽古を積んだダンサーの汗にシンクロして
個性溢れる芸術に変容していました。

観客も沢山入ったメルパルクホール。
見渡せば普段とはまったく違う客層です。
ひばりファンに和央ファンが
予想以上に大勢来ていたでしょうし、
もしかしたらお客様の大多数は、
バレエ公演は始めてかもしれないし、
映像と歌に気持ちを注ぎ過ぎて、
ダンスを見損ねていたかもしれない。
よもや超豪華なひばり歌謡ショーを
観ている錯覚に陥った方も多いでしょう。

新作ですから評価を受けるのでしょうし、
バレエ界においては、
特に何か文句を言わなくてはならない
評論専門の方々は辛口かもしれない。
様々なジャンルを昔から観ている私でも、
メルパルクではなく厚生年金会館に
通った80年代を思い出した程ですから。

いやどうだろう?
バレエの絶対評価しか基準が無い方は、
コマ劇場のサブちゃんや五木ひろしの
歌謡ショーを見て熱狂したことも、
場末のキャバレーで奏でるバンドの音で、
歌う演歌歌手や他愛もないステップで、
ダンスを踊る笑顔のお客人の姿など、
観た事も無いのかもしれません。

エンターテイメントというのは
目線を大切に扱われてこそと思います。
上目遣いではなく同じ目線です。
芸術然と舞台の上から魅せるのではなく、
ちょっとした懐かしさ、少しの憧れ、
手が届きそうな等身大の悲喜を感じて貰い、
舞台と客席のインタラクティブな関係を
同次元で提供しながら一緒に空間を創る。
芸術より大衆文化で丁度良いし、
俗物だから五臓六腑に染み渡っている
人間の機微なんて事に敏感です。
雲の上から芸術を棚卸ししても、
手が届きゃしないとも感じます。

国民栄誉賞を受賞している、
言わば政府お墨付きの歌姫美空ひばりを
トップ芸術を目指すバレエ団体が追いかけ、
新しいバレエ・エンターテイメントを
創作した勇気に心から拍手を送ります。

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