月の女神2007/08/27 23:11

音楽祭は終っても、
仕事はまだまだ終わりません。
終演時間が遅い野外劇場特設ステージなので、
次の日の朝から撤収作業がはじまります。
音楽祭前日の仕込みからほぼ1週間、
お世話になった野外劇場の撤収は、
フィルムのコマを戻すように進んでいきます。
大きな公演のあとに来る虚脱感が多少ありながらも、
みな撤収に汗を流して勤しみます。

劇場に潜む神の話はよくここにも書きますが、
この劇場に宿る神はどんな神なのでしょう?

夜の公演では、午後8時を回るころから、
劇場上空北側に必ず美しい月が現れます。
観客は、柔らかな緑の芝に囲まれて座り、
舞台の上空にしっとり輝く月を楽しみながら、
左右に静かに揺れる赤松を舞台美術になぞらえて、
舞台を楽しみ音楽に耳を傾けます。
きっと冬になれば、さらにキリッとした空気に、
さらに美しい月が顔を出すのでしょう。
そう、ここは月によって護られる劇場かもしれません。
河口湖の美しいすり鉢状の劇場が、
満点の星を臨む“ステラシアター”なら、
ここは、もっと大きな自然の空間、
南アルプスから、八ヶ岳、甲州路を照らす月、
毎日の天候も月に委ね、月が見守る劇場。

勝手に命名しましょう。
月の神になぞらえ、“ルナシアター”

道理で極超雨男の私が居ても降らないはずです。
月に抱かれれば、人間の運などちっぽけなもの、
劇場の運も月に任せ、女神ルナの采配に全てを託す。
どうでしょう、“ルナシアター”!

撤収完了した午後の劇場をもう一度眺めてみる。

昨年、ここに劇場など無かったと思うと、
不思議な気分ですが、これは偶然出来たのではない。
ここにあることが当たり前でもないのです。
大きな決断の下に、多くの方が集まり、
知力と経験によって沢山の時間と尽力があり、
この形と文化になったわけです。
杮落しから5日間の公演を経て今日、
あらためて見回してみると、
傷ひとつ無かった綺麗な完成時に比べ、
小さな傷と少しの汚れは、次第に風格となる、
劇場の歴史が始まった事を記す勲章です。
沢山の素晴らしい舞台を創造する責任を感じます。

音楽祭は、まさに怒涛の5日間の内に終了しました。
NPOを形成し、特別協賛という形で、
様々な協力をしてくださったアルソアの皆さん、
何百人という社員の方々が携わったのでしょう。
長坂、須玉の会場は、地元ボランティアの方々が、
手馴れた仕事振りで、協力してくれました。
地元には地元の顔が似合うものだと感じました。
野外劇場の設営から公演中、最後の日まで、
事故1つ、滞りも無く遂行していただいた、
私の信頼する最高のスタッフ方、
また音楽面で手の届かない部分にまで手を伸ばし、
様々なケアをして頂いた音楽スタッフの方々。
北杜市役所のかた、また関係機関や公的機関も、
協賛の名の下に、随分と助けられました。
何百、何千の方々が協力し終了しましたが、
多くの反省と、大きな手応えを生かしながら、
来年に向けていかなければなりません。
まだまだ2回目、ようやくつかまり立ちを始めた、
幼児の様な音楽祭ですが、
他音楽祭にはない「東西の出会いの場」という、
音楽祭のアイデンティティーを失ってはならず、
新しい文化を発信していく事をしなくてはなりません。

尽力くださった方、足を運んでくださった方、
この場を借りて深く深くお礼申し上げます。
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