ヘッセせっせと2008/02/01 23:34

10日バレエ公演
もう1週間後の公演ですが、
10日は、バレエ公演の指揮です。
「横井茂バレエ・リサイタル」であります。
横井先生は尊敬するバレエ界の重鎮ですが、
私は同じ誕生日という事もあり、仲良くして下さり、
時に叱咤激励などしていただきながら、
何年もお付き合いをさせていただいております。
先生のプロフィールを見ると凄いのですが、
まだ、バレエに演出家なんて存在していない頃から、
次々に素晴らしい創作バレエ作品を生み出し、
まさに日本バレエ界パイオニアの演出家です。
毎年の様に新作を産み落として来た先生も、
ここ数年はお休みしていたのですが、
満を持しての公演、指名に心より感謝しています。

創作バレエは、クラシック作品を使った作品でも、
自在に音楽を繋いだり切ったりしてしまうので、
嫌がる人もいるのですが、それは作り手のセンス。
作曲家も考えなかった構成や、作品の集合、
また大胆なカットなどを施すことも多々あります。
私達演奏家の様に、作品に依存していくあまり、
他の介入や、ましてや純粋を求めるばかりに、
精神的に内側に入り過ぎる傾向から見ると、
度肝を抜かれるような大胆な構成もありますが、
目からウロコが落ちるほどの発見もあります。
私は、クラシックにタブーを感じませんから、
センス良き創作は大歓迎ですが、
それにしても横井先生は良く知ってらっしゃる。
音楽を先ず蒐集していく事に始まり、
選定していくまでにはスコアまでじっくり見るそう。
なかなか若輩の私などは及ばない発想は、
平面的に扱っていた音楽作品も、
命を与えられたドラマティックバレエ音楽になります。
これは、先生の経験と素晴らしい技術ですが、
演出と一体なり、舞台空ドラマが溢れ出ます。

今回、素晴らしい作品は、3部構成。
第3部はベルリオーズの作品群による構成で、
「トロイの木馬」ですが、
あまりに壮大なオケと合唱も入りますので、
編成をピットに入れたら、踊る場所か、
客席が無くなってしまうので、録音を使用です。
それでも1時間の作品は、素晴らしい出来栄え。
リハーサルを見る限りでも、最高の内容になるでしょう。

私達は、1部と2部の演奏ですが、
1部はヘンデルの12の合奏協奏曲の5番、6番から
再編成した音楽を使用する「限りなき白へ」。
何処までも白に近い、純粋さと汚れの無き世界。
ヘンデルの弦楽合奏の時代と、「白」というテーマは、
オープニングに相応しい素晴らしい作品。
そして2部ですが、、、こいつが今回の頭痛の種。
話が長くなりそうですから、明日にでも回しますが、
この1ヶ月私を悩ませた主悪の根源が、
この音楽の元にあるのです。
ソイツは、思いもよらぬ西の果てに居て、
考えもしなかった時代のから目を光らせます。
中学生の頃の話まで遡りたい気分ですが、、
やはり明日にしましょう・・・。

2008年2月10日15時開演
新国劇場中劇場いて公演です。
素晴らしいダンサー、スタッフです。

鴨フライの食鈍化2008/02/02 23:58

中国製造の冷凍餃子の一件で、
勿論、事件の原因究明と、
食の安全厳守への声が高まっているのですが、
それだけで良いのでしょうかね。
私は食に対する欲があまり高くないので、
口挟む権利が無い気もしますが、
普段は、出されたものを美味しく食べる、
素材の美味しさを味わう、という2点が希望で、
それを逸脱しないようにするのが唯一の食欲です。
勿論、美味しい料理は食べたいですし、
シコタマ焼肉を頬張りたい時だってあります。
でも一番美味しいのは、その季節、
その時々の土地で、時節に合った物を頂く事です。
地産地消という事がよく言われますが、
その場所で採れる季節の物を食べる事は、
食文化の基本なのではないでしょうか?

音楽家は、旅公演(演奏旅行)が多いのですが、
宿→劇場→宿→駅→宿→劇場→宿・・・
の三点を移動しながら廻るだけで、あまり変化が無い。
そうなると楽しみは、土地の御飯と、酒、あとは言葉。
冬に海の町に行くのなら、寒いが鮮魚は最高の御褒美、
秋に信州に行くなら、豊かな山の幸に恵まれたい。
そんなささやかな文化の違いが楽しいものなのです。
しかし、今では日本中にモノが流通しすぎていて、
味の変化がとても少ないのは残念です。
山奥で赤々としたマグロが出されたり、
漁港町では別の獲れない魚、遠洋の魚もふんだんです。
勿論安全であれば悪いことではないのですが、
国産物と一緒に輸入野菜、肉、加工食品が流通し、
ましてや冷凍モノも多くては、季節も土地も関係ない。
日本全国築地市場のようなものなのです。

面白くないじゃござませんか。
美味しいものは誰だって食べたい。
魚も肉も、野菜も果物も、
いつだって欲しい味が恋しくなるもの。
季節を待てば良いのではないしょうか。
行く機会を楽しみにすれば良いではないですか。

美味しい御馳走を頂きたいなら、料理すれば良い。
作れない、時間がないのならやむを得ず、
特別な食事を、お金を出して味わうのみです。
そんな食事が日本の食卓の歴史だったはずです。
これは食が豊かになったのでしょうか?
いえ、違います。脳は満足したでしょうが、
舌は味覚機能が麻痺してしまい、食道は傍聴人、
胃はもっとも被害が大きい被災臓器になりました。
貪欲な食欲精神は、CGとキャドで立体製作された
形ばかりが食品モードの、カモフラージュ食文化。
日本の自給率は40%と言います。
どうしてでしょうか?そうでなくては困るのでしょか?
家計に響くといいます。物価高になるといいます。
季節の野菜が高いのでしょうか?
地産物までが高騰してしまうのでしょうか?
昨日の健康より、今日の食事、明日の日本を考えたい。
ドイツの自給率、90%以上、英国でも70%、
農業国でもある米国130%で過剰・・。
日本、見直しが必要なのではないでしょうか。

季節モノに早く手ぇ出すおっちょこちょいの「先走り」、
じっくり待って最高の時を楽しむ「旬」、
季節最後まで離れがたい未練舌の「名残」。
江戸の頃、食の“粋”というのは、
こんなものだったと聞きますがどうでしょう?
私は、粋でありたいものです。

旬を頂く2008/02/04 23:23

バレエのリハーサルに行く時の必需品があるのです。
譜面、シャーペン(芯は0.7mmしか使いません)、
赤鉛筆、定規、付箋等は、いつでも当たり前ですが、
さらに普通では持たないのバレエならではのモノが、
メトロノーム、ビデオカメラ、それにボイスレコーダー。
これらを忘れてはならないのです。
リハに何度も通うと次第に携行品は減るものですが、
それでも必ず鞄に詰めていってしまうのです。

ビデオカメラ?不思議に思われるでしょうが、
バレエはテンポと、音を出すきっかけが生命線。
指揮者やオケの都合でやりたい放題はNGなのです。
毎回、演出が変わればサンプルのCDやビデオ、
最近では頭出しに便利なDVDをお借りします。
これでだいたいの事は把握できますが、
それでも稽古場に行くと様々な事が変わっています。
リハーサルが進めば、演出も当然変わってきますし、
出演ソリストによっても好きなテンポは様々。
指揮者は、これらを覚えなくてはならないのです。
でも、繰り返し公演をやって、初めて解ることもあり、
ましてやダンサーの都合、その日の体調でも、
調整しなければならないので、「絶対」はないのです。
でも1回の公演をなんとか良いものにしたい!
となると、如何に事前に分析をしておくかが大切。

踊りがピッタリ合っているアンサンブルの様でも、
必ず中心となっている人がいて、
他には遅れがちの人、またテンポを先取りして、
他より先に先にと行く人もいるわけです。
そうなると、マーケティングが必要で、
得られた平均値で「誰に合わせようか」ではなく、
何を求めているかを音で示してあげるためなのです。
そうすればダンサーの耳と感覚は音楽を感じ、
肢体の感覚をそこに合わせてくるものなのです。
そんな事を考えるために、ビデオも持ち込みます。

メトロノームは、テンポを知るためには必要ですが、
実は劇場に行くと、練習と同じテンポでは上手く行かない。
ダンサーは音のテンポを覚えているのではなく
舞台の広さや奥行き高さで、感覚を変化させながら、
空間に合わせて踊るのですから、
同じテンポで踊っているつもりでも実は違う。
「いつもより速い!」などと、訝しげになじったり、
「ここは稽古場のテンポで」と音楽に要求するのは、
実はナンセンスンなのですね。
逆に、指揮者でも、CDのテンポを死守する方がいて、
舞台とピットで、テンポのやりとりをする中で、
「でもこれはサンプルのテンポですよ・・・」と、
メトロノームをピッピと鳴らす人までいる。

人も音楽も生きたナマモノ。
絶対もなければ、理想も常ではないのです。
サンプルは既に過去のもの。
GPだって、当日リハからだって、
お客さんを前にして、音楽と気持ちが高揚すれば、
すべては変化していくのです。
つまり、全て本番が最新の旬であり、
状況を味方にして最高に仕上げるのがプロなのですね。

その苦労のために道具を持ちます。
全て今日を過去にするための道具なのです。
公演は日曜日。

猫も杓子もカラヤン2008/02/05 09:41

R.Strauss
All About に新しい記事を載せました。

今年はヘルベルト・フォン・カラヤン生誕100年。
なんて、随分昔の人を扱うようですが、
私達の世代にとって、カラヤンはヒーローであり、
その反面ヒールでもあったのです。
ヒールの部分は、決して悪いことばかりではなく、
彼が挑戦し続けたことに対してはリスクもあり、
結果が芳しくないものも、世の中に出回ってしまう。
しかし、常に時代の先端を走った彼の挑戦を、
否定する事は簡単ですが、真似はできないのです。
つまりリスクの大きな実験まで世の中に魅せて行った、
という彼自身の音楽活動は、
聴く人、観る人によっては、
逆の方向に走るヒール役という捉え方もあったわけです。

クラシック音楽の世界では、周年記念企画などは、
作曲家しか取り上げず、ひとりの演奏家に対して、
業界全体が手を挙げて企画を進めるのも珍しいです。
一体今年は何枚のCD,DVDが出されるのでしょう。
昨年12頃から盛り上がり、既にこの頃より、
店頭だけで、十数種類並んでいますし、
企画をみるとさらに増え続ける見通し。
4月5日の誕生日に向けて加速する見通しです。

私もモロにカラヤン世代ですから、
とてもうれしい傾向ですが、これもひとえに、
彼が執着して残したたくさんの記録のおかげです。
もちろん事業として成立する少ない音楽家の一人ですが、
録音、録画が大きく変化した20世紀後半の50年、
最高にして永遠の業界バロメーターだったのでしょう。
また春にでも第2弾を書こうと思いますが、
とりあえずカラヤン未体験の方に、
カラヤン町1丁目の道案内というところでしょうか。
ちなみに、相変わらず扉の写真は自分で撮りました。
指揮棒はそのあたりに転がっているものですが、
下敷きになっているスコアは、
R.シュトラウス作曲 オペラ<カプリッチオ>から、
月光の曲の後半です。
と、マニアックな情報も残しましょう・・・

「カラヤン生誕100周年」記事はこちらです。
http://allabout.co.jp/entertainment/classicmusic/

居留地2008/02/06 18:01

銀座十字屋さんの季刊誌「十字屋通信」に
前号からコラムページを頂いております。
「銀座と音楽」と題されたコラムは、
右から読んでも左から読んでも、成立するので、
駄文コラムニストには湯加減が丁度良く、
体裁良きタイトルロゴに仕上がった前号には、
とても感謝したのです。
しかし季刊と言うのは、
季節の移ろいを恐ろしく早く感じるもので、
先日悩んで仕上げたたはずなのに、
もう次を書かなくてはいけない時期、、いや、
正確には、提出を求められているのです。

温故知新マニアの私は、調べ出すと切が無く、
知らなくてもいい事まで遡ったり、懐に飛び込んだり。
突然名前が出てくると、その人が誰だか知りたいし、
背格好から交友関係、食事の好みと好き嫌い、
酒は呑めたか飲めないか、何なら血液型まで・・・。
最近は便利な時代で、インターネットで検索すると、
おぉ、よくぞ調べてくれた!と思う出所不明の記事や、
信憑率が5%まで下がってしまう匿名のブログもあり、
なんとなく気持ちは収まるものではある。
しかしまぁ、コラムにはしなくてはいけないので、
1000調べて3つの事項しか採用ないでしょうが、
思考して、切り取り貼り付けコラージュです。

銀座関係を調べる時、かならず出てくる築地居留地。
ご存知の様に、幕末に開港した後、在住外国人を護り、
同時に日本人も護る為につくった、外国人居住地域です。
居留地は日本全国あちらこちらにあり、
横浜、神戸、函館、長崎、新潟となるのですが、
私の興味は1点。
「如何に音楽が水揚げされたか」なのです。
当時、鳥が歌わない限り空から降ってきた音楽は皆無。
全ては海から陸に運ばれたので、
居留地は西洋音楽と日本の音楽の接点となり、
様々な民間レベルの交流があったのですね。
横浜居留地に関する事は、
横浜ゲーテ座関連や、オペレッタ公演で、
この10年とても仲良く調べさせてただきました。

銀座調べの延長で必要な築地居留地の歴史は、
調べるほどに、これまた目からスパンコール、
口からは「ほぅ!、ほぅ!」と感嘆符がこぼれます。
また、面白い本にも出会うものです。
『築地居留地』 2000年の発刊ですが、
発刊元の築地居留地研究会は、今年から、
NPO法人になったそうです。
それだけ価値高き研究と歴史なのですね。

「十字屋通信」は、3月になるでしょう。
そうそう、All Aboutのメルマガ、先ほど発刊しました。
読者は全国およそ280名です。

トロイとバイク2008/02/09 23:16

一昨日からオーケストラのリハーサルが始まり、
本日は劇場でゲネプロでした。
横井先生、舞踊生活60周年記念公演です。
すごい事ですね、60年を舞台と共に過ごすって。

私は普通に指揮をしているだけですが、
ここに至るまでは編曲もあり大変でした。
リハーサルでは、ソフト打ち込み時の間違え、
昔で言うところの「写譜ミス」などもあるため、
皆それなりにピリピリいたしますね。
バレエダンサーは、音楽とドラマを2ヶ月かけて、
頭にたたみこみながら稽古しますが、
オケの演奏者は、いわば職人、
譜面を理解すれば、数日でよい状態に仕上げます。
これには、普段の鍛錬、経験や想像力など、
いくつもの必要な要素はありますが、
譜面から全てを読み取りますので、
信頼のおける譜面が整っている事は大事なのです。
これは指揮者の権限と譜面を触る係りの責任、
通常ではライブラリアンと言いますが、
この両者の連携が大変重要なのです。
編曲を施した譜面だったり、いい加減な出版社や、
出所不明のパート譜だったりすると、
ライブラリアンの責任が重大になってきます。
とは言え、バレエやオペレッタの譜面なんて、
シンフォニーオケの譜面に比べたら酷いもので、
奏者にとっては信頼どころか、ほぼ安心も怪しく、
だいたいにおいては、不信感及び嫌悪感に近い状態。

時間があればしっかり譜面を見直して、
全パート確認して、チェックして・・。
いや、そこまでの時間がどうしても取れないのです。
私が仕切れない部分を制作Mにも任せてしまいますが、
自分でやらなければいけないと、今回も思いました。
まぁ、しかし毎回嫌な顔もせずに付き合って下さる、
演奏者の方々には心より感謝です。
1部、ヘンデルの合奏協奏曲はチェンバロ入り。
2部のリヒャルト・シュトラススの「最後の4つの歌」、
今度はソプラノも入って、フルオケ。
3部になると、休憩時にピット壊して大階段つけて、
たいへんな舞台になります。
さっき、ゲネプロ見てきましたが、いや、これは凄い。
これを指揮したかったですが、
ベルリオーズの美味しい曲のコンピレーション構成で、
横井先生のセンスで「トロイの木馬」のドラマです。
でも、オケ100人必要な曲から、合唱入り、
さらに歌手のソロと、幻想交響曲もあって、
こんな音楽をセッティングしたら、新国中劇場は、
客席を全部潰さなくてはならなくなります・・・。

写真は、記事とは関係ありません・・・

ではなく、舞台稽古の前です。
この「トロイの木馬」、大型バイク5台が舞台を走る。
ちなみに乗っているのも皆ダンサー。
ピット潰した大階段だし、おまけに、
馬がCG(コンピュータグラフィック)で、
ホリゾント幕にデカ映しでパカパカ動く!!
横井先生、御年77才!
頭が柔らかすぎます。
ゲネプロ終わって帰りの御挨拶。
「お見それいたしやした・・・」と、深深頭下げ、
明日の成功を誓って帰路に着きました。

それにしても雪!
あした、大丈夫なのか・・・。

終演2008/02/10 23:43

横井先生のバレエ公演終わりました。
ホッとしております。
ヘンデルは良き演奏になりましたし、
真珠の様に輝く、綺麗な純白の舞台でした。
コンピレーション(再構成)なので、
12の合奏協奏曲の中の5番と6番を再構築させて、
約30分の大きなドラマにされています。
調性などで、若干不可解な曲の繋がりがあるものの、
さすがの構成力で、初めて聴くお客様は、
こういう音楽がオリジナルなのだろうと感じるはず。
不思議なもので、次々に演奏していくと、
構成された音楽は次第にドラマ化していくのです。
勿論、これは狙ってそうしていくのですが、
あまりおおきなテンポ変化は出来ませんし、
再構築というビハインドを考えると、
計算し過ぎても出来ないものなのですね。
Largoは、演奏している時に遅いと感じながらも、
ドラマ構成の中では欠かせない充実したテンポ。
舞台のダンサー達に、目と脳で檄を飛ばしながら、
少しサディスティックな試みと思いながらも、
やはり、必要なテンポと、身を委ねます。
ライブと言うのは、恐ろしくも面白いものです。

2部のリヒャルト・シュトラウスに関して、
もう終りましたから、少しだけ補足します。
<最後の4つの歌>は、本来ソプラノ歌手と、
フルオーケストラの編成で演奏されるもので、
3曲がヘルマン・ヘッセの詩、最後の曲が、
アイヒェンドルフの詩です。
実はこの曲自体、初演からまだ60年、
しかもヘッセの著作権は現在切れていません。
当初普通に演奏しようとしましたし、
素晴らしいソプラノの佐々木典子さんが、
2つ返事で出演OKしてくださったのです。
しかし秋になって譜面をレンタルする段階で、
管理している日本S社にレンタル申請し、
バレエ公演での使用等を話したところ、
ヘッセの遺族からのクレームがつきました。
<演奏会形式意外での上演を一切許可しない>と、
厳しい内容のもので、この答えに窮した先生も、
丁寧に英国に手紙を書き、お願いしたのですが、
結局許可が下りなかったのです。
ベジャールの振り付けでは現在も公演がありますが、
べジャール以外では演奏許可しないということですね。

困りました。作品はもう広報に出ているし、
演出、振り付けの問題も大いにあるのです。
結局、ヘッセの3曲は歌詞を出さすに演奏、
つまりソプラノは出ないでオケ曲として演奏し、
4曲目のアイヒェンドルフのソプラノ付き・・・。
<最後に1つの歌>、、、という状態です。
しかし仕方ない。という事で、12月中旬から、
この曲の編曲もしなくてはならずに、
とんでもない多忙な日々になってしまいました。
バレエなので、なせる業、、と言うより、
演奏会だったら演奏できるのですから可笑しな話。
ま、しかし上手くいってよかったですし、
これも何も知らないで初めて聴くお客さまには、
「こういうものか」で済んだのかもしれません。

3部の「トロイの木馬」は圧巻です。
創作バレエの愉しい所を全部詰め込み、
1時間の大スペクタクルを魅せてもらいました。
本当は、このベルリオーズを生でやりたかったけど、
オケ、合唱、独唱、バンダ、、、無理ですわ。
こういうのは、録音の方がよいのです。

関係者の皆さんお疲れ様でした。
観に来てくださった方々、ありがとう御座います。
さて、明日から次の譜面を読まねばならない!
頑張ろう。

街の灯り2008/02/13 23:57

地元「音楽の街-狛江」推進委員会の活動は、
年度末に向けて、終息を迎えようとしてい・・
いやいや、終息なんてないのですよ。
元々は単年度の会議中心の市民協働の会ですが、
椅子に座って机上の空論ばかりでは仕方ないと、
今年度は、様々な公演を行なってきました。
このあたりは、いつも報告しているとおりです。
合計5回の野外でのライブ活動や、
12月のクラシック音楽中心の「夢コンサート」は、
事業を企画実行することだけでも、
本来は専門スタッフと、プロのプロデュースが必要。
勿論、私も普段はあちこちで企画事業やっていますし、
まかりなりにも委員会の半分はプロの演奏家。
事業を推進する事は出来るのですが、
元々規定では、年会5回の会議で顔を合わせるのみ。
これでは事業推進も実行も出来ないので、
イレギュラーな会議や、時間外中華別邸サミットで、
なんども時間を費やし、それに加えて、
家でも思考したり、アイデアの立案を書き留めたり、
委員全員、限りない時間を消費して公演実行している。

単年度と言いながらも、2年目の活動の年度末、
来年度に向けて、いや近い将来の目標に、
様々な事項を検討しなくてはなりません。
障害は何でしょうか・・。
あるとすれば、「瞑ってしまう」事でしょうか。
閉じてしまう、見えなくしてしまう、
動かない、触らない、、これは恐ろしいことです。
前に向かうには、目を開けていかなければなりません。
利権が絡むでしょうか、政治が壁になるのでしょうか。
文化芸術は剣よりも、ペンよりも強いと信じます。

これからロゴマークの選定作業に入ってまいります。
どこでもそうですが、ブランドラインを作る事は、
大切だし楽しいことなのです。
その第一歩としてロゴマーク。
1月下旬の募集締め切り時点で200を越す応募。
嬉しいじゃありませんか。
しかしこれから1点に絞るのは難しいですね。
書いた方、創案の思いを読むと、“なるほど!”と、
唸るもの多数、大変忍びない作業でもあるのです。

今日は、お招きしたデザイナーさんとの会議、
その後も、事業活動提案でプレゼンに来ていただいた方、
さらに副委員長と、市民協働課の皆さんと様々な会議。
市役所での会議で、夜訪れるのは今や慣れていますが、
帰りに宿直室から出る時間になったのは初めて。
それだけ時間が必要という事ですが、
これからどうやって宝を磨こうという話です。
決して嫌な時間ではないのですね。

来週公演2008/02/14 23:14

来週、23日~24日の公演のお知らせ。

NBAバレエ団公演「ドン・キホーテ」
2月23日(土)18:00開演
  24日(日)15:00開演
五反田ゆうぽうとホール
です。

チケットは、SS席12000円~
A席9000円、また学生席は5000円
ですが、関係者割引もありますので、
御興味おありの方は、私まで御連絡ください!
御配慮申し上げます。

ドン・キホーテは、作品として知らなくても、
自由奔放なドンファン、としても知られており、
単純明快にわかり易いお話ですね。
今日はリハーサルに行ってまいりましたが、
1週間前と言うことで、さらに熱を帯びていました。
演出のヴィハレフ氏はもう何度も来日している、
特に、復興上演には無くてはならない方ですが、
リハーサル中の的確な指示と、技術指導だけでなく、
ドラマに対してのバレエの演劇的表現、所作まで、
センシティブに指導をする方なのです。
勿論私とは音楽とテンポの話をするのですが、
ダンサーの都合ではない、表現に必要なテンポ、
そうでなくてはならない絶対的なテンポ、という、
観念から要求される内容も、いつもながらシビア。

くるみ割り人形、白鳥の湖、眠れる森の美女・・。
言わずと知れたチャイコフスキーの3部作ですね。
しかし、これより他の名作バレエといわれる、
例えば、コッペリア、シルフィード、ドン・キホーテ。
いったい誰が作曲しているのでしょうか??
と、疑問を持つクラシックファンは多いはずです。
いや、細かい話はまた今度ですが、
大抵は、オケで使う譜面が酷いのです・・・。
世界中、どの劇場でも上演されていながら、
多分劇場の数だけ、譜面の版の種類があると思われる。
これは誇大ではなく、本当に、正確な出版物がなく、
振り付け演出の都合、また人気の流行り廃りでも、
音楽が変わってしまうのですね。
いや、この話もながいので、また今度です・・・。

しかし、今度のNBAバレエ団の譜面は美しい!
このために、このVer.のためにアレンジされた譜面です。
嬉しい・・(涙)
前に上演したところでは、譜面の知識も無いままに、
様々な上演を集めたて、再構成したものだから、
オケ譜を探したり、借りたり、補足や直し当たり前、
最後は、アレンジまでして対応してクラクラしました。
譜面が整っていれば演奏者もストレスが無いのです。

さて、御興味ある方は、榊原まで!
また、リハに行きますので、御報告いたします。

音楽と神2008/02/18 22:32

バレエの公演が近づき、リハーサルに、
足しげく通う毎日ですが、その度に思うのが、
ダンサーの稽古の厳しさ。
オペラ、また楽器奏者のリハーサルと比べても、
格段に厳しいし、競争も激しい。
朝は早くから、レッスンがあり、
その後、午後には公演の為のリハがあります。
現在のように公演が直前になれば、
指導者以外、殆ど言葉を発しないまま踊り、
日は暮れていくのです・・・。
切磋琢磨と言いますが、比べると音楽の世界は甘い。

あと数日となり今日はキトリを踊る、
エフゲーニ・オブラスツォークさんも一緒。
素晴らしいゲストにも、演出家からは容赦ない注文。
とにかく厳しい世界です。
リハを観るたびに、私も「甘い甘い」と、巳を引き締めます。
まもなく公演、頑張っていかなくては。

甘いと言いながら、音楽家でいることの辛さもあり、
音楽があることで救われることも、また多いのです。

「日常は奇跡である」と言った方がいます。
さまざまな事件が起こり、事故や犯罪、災難など、
列挙すれば切が無いほどの、この世の毎日。
また、傷ましいのは、家族内に起きてしまう殺傷事件、
親は子を護り、子は親を慕う姿が本当ではないのか。
穏便な麗かな毎日、奇跡などと呼ばれない、
誰にとっても微笑ましい日常が訪れ、
全ての人が幸せになれるようになって欲しいものです。
今日は、本当に神様にそう願いたい。
カウンター