出発!!2008/08/02 02:24

昨日公演が終わって、やっと落ち着いた。
とは言っても、一息ついている場合ではなく、
朝から、怒涛の譜面チェックマシーンと化す。
未使用のオケ譜を突然公演の日に使う事ほど、
大胆、且つ恐ろしいものはなく、
念入りにチェック、またチェック、そしてチェック!

と、言っても、理解できない方、多いのでしょうね。
オケの個人譜面(通称パート譜)など、
全く信用できない・・とは、いえないが、
腹黒い親友より手に負えないといいましょうか。
昔の譜面、作曲家は手書きですから、それを増やすには、
また手書き、手書き。
人の手から人の手で、伝言ゲームのようになり、
しかも、答えの当たらない伝言ゲームばかり。
これが印刷されるようになると、また厄介・・・・。
人は騙されるのですよ、綺麗なピカピカの譜面に、
これも人が譜面を植字しているのですから、
最初の段階で間違えがおおくなる。
しかし、昨今は、これらを研究してくださる学者さんが、
研究版と言うもので、正してくださり、
私達は、お金を払うことで、安心する譜面を、
手に入れたり出来るのです。
しかし、しかし、なのです。
これらは、通常演奏会数の多いシンフォニーの事、
オペラなんて、この作業はあまりに大変で、
しかも公演回数考えたら、学者も、研究かも、
口を噤み、決して手も挙げないでしょう・・。

でも、こんなオペラの話は、ましな方なのです。
さらにいい加減な譜面がこの世には存在し、
特に、流行を狙って、商業的な薦めもあって書かれた作品、
実にいい加減で、時代を経て、なお適当なまま。
普通は、指揮者用のスコアがあって、
パート譜と見比べながら、作業すれば良いのですが、
その指揮者用スコアが手に入らない・・・。
編曲されたピアノと歌の為の譜面を頼りに、
探って探って、ようやく真実を引き寄せる。
地道に、譜面を貪り読む作業を繰り返して、
ようやく、正しいことも、間違えいも遭遇する。

しかし、渡英の前日、山のような仕事・・・。

譜面を見ながら、昨日の公演の巨大スクリーンの
返却を電話で段取り、同時に、飯も喰う。
次のパートはトイレの中で、その次は、
また別所。間に違う仕事挟み、さらに譜面。
実は、5日の公演の曲、1曲無くて、
ようやく先ほどアレンジして、構成して印刷。
10年前だと、このような時、必ず酷使したパソコンが、
大事な時にフリーズしたり、印刷できなかったり、
データがいきなり飛んだり・・。
今は安心です。これだけでも、精神衛生上極楽。

さて、1週間の英国。
物価約2.5倍、どういうことでしょうね・・。
マックで1500円払うって、どこがバリューじゃい!
ロンドンで公演ではないので、喧騒を離れる分、
物価なんて気にしませんが、
何をもって行けば良いのか、、、
燕尾服詰めて、指揮棒詰めて、譜面置いて・・。
眠いのです。。いや、寝てはいけない。
本日は眠気覚ましの、ブログですが、
こうしていると、また時間が無くなる。
うぅ、やや、4時間後には電車に乗って居ないと、
飛行機乗れないジャン!

用意します。何がつらいって、公演より荷物詰め。

現地から、2年前の様に、毎日報告できたら良いのですが、
どこに収監されるのかもわからない・・。
ふ~・・。
では、用意して行ってまいります!!

バクストン2日目2008/08/03 23:22

2年前の英国公演、到着が深夜で、
2日目朝はボウ~ッと迎えましたが、
今回は、到着が早かったので、ゆとりの2日目。
私は早起きで散歩をし、圭生はランニング、
寝坊の方、二度寝の方、昼寝の方、
それぞれの方法で時差を解消するのです。

朝御飯後は、持参したカレー・ルーを消化しようと、
私がひたすらカレー作り。
ジャガイモ、にんじん、玉葱、シャンピニオン、
鳥の骨付きモモ肉、どれも美味しそうな食材。
昨夜行ったスーパーで買い込んだのですが、
なに見ても美味しそうで、馬鹿買いです。

今回は、一軒家の貸切。
前回の大学寮も、キッチン付で、
なかなか居心地が良かったのですが、
ここはここで、快適なのです。
部屋も多く、バスやトイレも2つずつ。
5日間の滞在には丁度良い大きさの家です。
意思の疎通を図りながらも、個人を守る、
演者には必要な空間が提供されました。
ただ、坂の上にあり、劇場からの帰りは、
坂道付の20分なので、少しきつい。
タクシーと徒歩でしのいだので、問題は無しです。

夕方からは、稽古でしたが、
こちらの希望する小道具がなかなか揃わず、
歌手には申し訳ない・・。
ピアニストのヒラリーは、前回もお世話になった。
決して特上に上手くはないのですが(失礼!)、
G&S作品を知っている上に、譜面を読むのが早く、
いろいろな場面で重宝がられるのが良くわかる。
気さくな彼女は、日本語の芝居や、
我々の所作にも良く笑ってくださり、
稽古している間の、観客のバロメーターとしても、
とても最適な方でしたね。
圭生が日本から持参したお土産の扇子を気に入り、
和モノ柄を綺麗だ!綺麗だと、喜んでくれました。

7月31日に四谷で公演を打っているので、
ここから先は詳細の調整をしながら、
5日の本番に向け再調整なのです。
英語の発音、道具の処理、観客との間など、
調整したいを確認しながら稽古をします。
劇場の今夜の演目を観るため、7時半に切り上げる。

やはりギルバート&サリヴァンの人気作品、
<HMS軍艦ピナフォア>に期待するのは、
Opera de la Lunaという英国のプロ団体の上演。
人気の団体に、人気演目、
そして仲良くなりたい、素晴らしいスターの出演。
一昨年も観ましたが、
芝居と、観客をつかむ間、動きの一つ一つが、
熟した熱演は、演出がVer.Upしてさらに面白い。
オケではなく、ピアノ+4人の奏者が舞台上、
演奏者も全員参加型の舞台は、
もはやミュージカルという言い方がふさわしく、
これも、G&Sが今でも愛されるようにという、
さまざまな団体の工夫でしょう。
人気者のサイモン・バタリスは、演技、踊り、
表情から歌まで、英国のスターでしたし、
話したら、日本に2011年に来日らしい。
再会が楽しみな素晴らしい演者の彼です。

成田空港で、Festival監督のイアン&ニール親子に、
プレゼントするTシャツ選びで散々悩みながら、
結果的に、これしかないだろうと、
赤塚不二夫氏のTシャツを選び出した。
バクストンで渡したら、とても喜んでいたのですが、
私が買った日に、赤塚氏亡くなったのですね・・・。
なんだか、複雑な気分でしたが、
ニャロメが海を渡って、喜劇人に渡ったことは、
偶然ですが、価値あることでした。

バクストン3日目2008/08/04 23:23

リハの2日目。
倉ちゃんの体調が気になるも、
時差調整や、舞台感覚を失わないための稽古日。
日中は、することがあまりなく、
みな休息や街中散策、そして体調管理。
寝る人、休む人、仕事する人、
洗濯する人、買い物に行く人・・・。

私、やわらかいベッドが全然ダメで、
日本でも地方の安ベッドだと床に寝ていました。
最近は、そんな事も忘れていたのですが、
長旅と、少し柔らかいスプリングで、
相当腰と背中に疲労が来てしまった模様。
持参してするのは、低周波治療器ではなく、
愛用の中山式快癒器にすればよかった・・・。
と、後悔するのですが、暁子先生が貸してくれた、
ラブをベタベタ塗り、メンソール臭男になりながら、
なんとか痛散させようと努力・・・。
この痛みは、公演後まで続くのでした。

しかし男衆、皆料理好き。
なにやら大量に買い込むと、料理して楽しむ。

英国料理、世界最低の烙印を押されていますが、
野菜、肉、加工肉、酒、、、どれをとっても、
素材に関しては日本より濃い味で、おいしい。
野菜の味は青く、赤い野菜は甘く、
そして肉は獣の味がたっぷり、牛乳は乳脂肪が濃い。
料理の仕方次第だが、英国人、
煮込んだり、炊いたり、ふかしたりしないので、
フィッシュ・アンド・チップス、ローストビーフと、
相成るわけですね。
日本人の料理は、素材があれば何にでもなるので、
こだわりの男衆、腕の見せ所なのです。

夕方の稽古は発音を中心に、様々確認。
倉ちゃん、大事をとって、必要部分の稽古で早上がり。
それでも、大体舞台寸法もわかり、
さらに様々な台詞は、英国仕様の工夫を重ねる。

稽古後、家に戻り、由樹隊長の料理に舌鼓を打つ。
朝から仕込んだ鍋は味が染み渡り、
感激しながらゆっくり食事。
その後も、みな思い思いに過ごすバクストンの夜。
私?呑み過ぎ

バクストン公演日!2008/08/05 23:24

公演の日だというのに、
詳細の時間の流れがつかめず、
朝食後は、多少イライラ、ザワザワ家の中。
日本人は、10分単位で物事考えるので、
時間厳守は、当たり前なのですが、
彼らは、ドーンと来い!って名具合で、
あまり気にしない。結果があれば良いという、
そこそこいい加減なようで、でも約束は守る。
朝一で劇場入りした圭生から電話があり、
10時30分からセット下見と、場当たり決行。

今回、手持ちの道具と衣裳以外、
全て現地で揃えてもらう予定だったので、
希望は出しておいたものの、何が来るのか、
寸法、位置、材質、取り扱い・・。
渡英以来、心配事ばかりでした。
2日間あったリハも、本番仕様は何もなく、
当日まで、手に取るものを含め解らなかった。
でも、劇場入りし、匂いを懐かしく感じる舞台には、
素晴らしい美術セットが建て込まれ、
注文、予想通りの置き道具がありました。
歌手も笑顔。ホッと息付き、舞台を歩き、
触れるもの、座るもの、ひとつひとつ丁寧に点検。
この舞台、『八百屋舞台』と言って、
舞台奥から客席に向かって斜めに下がっています。
最古の屋根付劇場と言われる場所で、
すでにこの習慣がありますし、
舞台の奥行きを出したり、観客からの見栄え、
さまざま効果が得られるのです。
でも、日本には先ず無いので、
経験ない方、慣れないと危ないものです。
人によっては『酔う』と言うのです。
演劇、オペラはまだしも、バレエでも、
八百屋舞台は使うわけで、国や地方によっては、
罰ゲームと思わしき傾斜を持つ劇場もあります・・・。

安心して、劇場から部屋に一旦帰る。
荷物を置いた瞬間、一斉に食事の準備!
相変わらず食事担当のオスたちは、
東京での日常を懺悔するかのように、
額に汗をして料理にいそしみます。
由樹隊長の指示で、手際よくソース作り、
倉ちゃんのテノール仕様の生姜用『おろし金』は、
『パルメジャーおろし』に最適で、
日本ツールのブラボー加減、1キロパスタの火加減、
全てが最高にて、我が家の食卓は超御機嫌!
30分で、イタリアのリストランテに早代わり。

楽屋入りは2時。
2演目ありますので、舞台美術の関係から、
リハーサルは逆の順序で行います。
2年前は、朝から時間もなくギリギリで調整。
オケのリハも、歌手との調整もなく突然ゲネプロ。
音の直しも出来ずに本番迎えたというのに、
今回は、オケ練習モドキ、歌手合わせ風の時間を稼ぎ、
ゲネプロ後も5時ギリギリまで調整する。

様々な国で、多民族の奏者、歌手と仕事をしますが、
信頼関係があることは何よりです。
アジア人が西洋人の中で認められていくのは、
突出した技術、芸術性も必要ですが、
なにより安心できる経験に勝るものはないのです。
双方の信頼関係は、公演成功の裏付けです。
2回目のオケは、迎えてくださる最初から、
私に暖かく、拍手と笑顔で嬉しいものです。
オケのみなとは、話す時間さえないのですが、
音で培った信頼関係は、今回の笑顔に象徴され、
この事で、公演の成功を半分確信したのです。

<陪審裁判印>より先に上演する1時間の公演です。
3人の出演者、指揮者、演出家、拠所スタッフ二人。
7人のチームワークが結集する時。
いつもより丁寧に時間を使い、執拗に盛り上げてくれる、
総監督イアンの雄弁な前口上は、既に15分経過。
オケの皆さんは辟易でしょうが、東の果てから来た、
7人の侍の再訪に心からの歓迎の意を感じます。
さて、出陣!ピット内を小走りに指揮台に上がります。

序曲では、演奏者の顔を確認しながら楽しみ、
これから始まる非現実な悦楽の舞台を音で奏でれば、
この数ヶ月、いや半年の事を思い起こし、
手を振り送り出してくださった方々の顔が浮かぶ。
演奏しながら感傷に浸るほどベテランではないので、
舞台の成功を音で見守りながら、
音楽なき部分も、万が一に備え、
いつでも台詞を付ける準備もしての本番。
そして、あっと言う間の1時間でした。
素晴らしい歌手、オケ、そして暖かい観客。
ある特定の英国芸術文化のクローズアップですが、
舞台と客席を相互通行する時間は、
日英150年の節目の時代に相応しい、
充実した時間となりました。
多くの日本人関係者に、観てもらいたかったし、
日英間交流の大切な結果を、
丁寧に報告するのが私の役目、とも思いました。

もうひとつの公演<陪審裁判印>も終わり、
楽屋で互いを労い写真撮影!
荷物をまとめ、フェスティバルの打ち上げ会場へ。
私達が入ると、数百人の皆さんが拍手で迎えてくれ、
さらに途中でも、MCによる紹介で、再度起立。
なんだか、期間限定、地方と演目限定のスター気分。
投げキッスに、手振り、三方拝に自分から握手・・・
侍日本の男衆は、気持ちの良い歓迎に、
心の底から勘違いをしながら応えたのです。

その後も、深夜までゆっくり酒を酌み交わす。
この日は、極楽の美酒に最高の一夜。

バクストンから倫敦へ2008/08/06 23:25

数日間世話になったバクストンから、
ロンドンへの移動。
歌手3人+スタッフ2名は先に出て、
車から電車に乗り継ぎ、ロンドンへ出発。
私とメグは、昨夜の公演のDVDを受け取ってから、
ロンドンに向かうことになった、のだが・・・

10時に出来上がると言っていたDVDは、
12時間前の公演をもう販売するといいう意味だった。
「え!?聞いていないよ?!」と言うことに。
これは、事前に契約をしたかったことでしたが、
録画はしないという意向を聞き、
それならば、文書でのやり取りなど必要なく、と、
思っていたのだが、いつの間にこうなったのか。

劇場は、100年前の建築であることが容易にわかる、
レンガを積み上げたものですが、
10数年前に内部は綺麗に修復されており、
金の細工をあしらった彫刻部分の輝きは、
つい最近建立された様な内部です。
また、音響や照明といった技術設備も、
この修復の際に一新したのでしょう。
録画用のカメラは、私が見る限りでも、
5台設置のマルチビジョンであり、
これらを、瞬時に切り替えながら、同時に、
編集もするのです。
最近は、アマチュアオケの公演収録や、
ライブハウスなどでも、同時に編集しますが、
このフェスティバルは、演目が14~15と限られており、
毎年内容は変われど、演目の数は増えず、
しかも経験が増していくので、
秀逸な編集が同時に可能なのでしょう。

出来上がったDVDは、
契約の問題は孕んでいながらも、
とてもよい出来で、公演者ながら、
ぼうっ~と、感心しながら見てしまいました。
いつか皆さんに見ていただく機会を設けたい次第です。
契約ごともきちんとしなくてはいけない・・・。

さて、DVDを受け取り、バクストンを後にします。
車で30分、綺麗な放牧の丘を緩やかに下がり、
乗換駅まで向かうと、時間通りにロンドン行きが来る。
悪名高き英国の列車事情を「耳タコ」で聞いていたのに、
肩透かしのように乗り込むことが出来、
これで、昼過ぎにはロンドンだと、一眠り・・・。

しかし、あまりに静かな車内の雰囲気に目が覚める。
「あれ、動いていないの?」
「信号機故障で、1時間はかかるって・・・」と、メグ。
どうやらすでに20分ほど停まっている。
またアナウンスがあり、「まだ待て」と。
見渡すと、サラリーマン、休暇旅行中の夫妻、
家族連れの集団、老紳士・・・、
一人も慌てず騒がず、読書したり談笑したり。
1時間半経ったところで、
「復旧の見込みがないので、次の駅で乗り換え、
ロンドンに向かってください!」と。
【ピキ!】と毛細血管の切れそうな音は、私。
他の皆さん、【フ~っ・・・】と息を吐き、
ゆっくり荷物をまとめだしただ。
あぁ、なんという英国人!
大らかであり、諦めも早いのか、
怒らず、慌てず騒がず、の典型なのでした。

何度も乗り換え、荷物を引きずり回し、
ようやくロンドン着は、到着駅も変わって夕方。
田舎町バクストンとは違う、眩しい都会の日差しに、
心地よい喧騒、足早な多民族の表情。
東京のようなロンドンは、帰京した気分です。
多少買い物をして、皆で落ち合って、
予約の店で肉を食い、ド~ンと打ち上げ。

公演後、やっと一息ついた夜でした。
ホテルのベッドの硬さが都会的で、
貪る様に睡眠をとるのでした。

写真は、次の朝散歩してお城の庭を歩いた時の、
イングリッシュガーデンの薔薇
美しい姿に露が付、英国風情満点の満開

帰国2008/08/08 23:28

帰国いたしました。
長いですね、フライト11時間は。
バクストンの深い秋の気候、
晩夏の雨をロンドンで浴びるうちに、
東京の気候をまったく忘れてしまいましたが、
飛行機の外に出た途端に、ゲンナリのリアル東京です。

そうは言っても、東京はあり難い。
帰って来た事をホッとする我が町なのですから。

今回、バクストンでは全く通信ができず、
メールも勿論ネットも失礼いたしました。
気になる案件もございましたが、
公演に集中し、準備万全でのぞむため、
あえてシャットアウトの日々でした。
帰国した後の事は覚悟しましたが、
自宅では、まずメールのチェックから・・・の、600通。

1週間でこうなるのかと、大事なメールと、
スパムを振り分けるのに、1時間を要し、
明日からこの件に対処しながら、
仕事を進めると思うと、
強制的に日常に引きもどされるようですね。
まぁ、仕方ない。切り替えてまいります。

様々な方にお礼行脚をしなくてはならないのですが、
取り急ぎ、公演の成功、帰国のご報告をして、
フェスティバルのサポートにも感謝し、
御挨拶とさせてくださいませ。

ありがとう御座いました!!

苦労の結果2008/08/10 23:52

久しぶりに数度携わった母校の指導。
全ては、この日のコンクールのためでした。

今に始まったことではないのですが、
吹奏楽コンクールは、中高生、いや、大学、一般と、
全ての吹奏楽愛好者の頑張り度バロメーターです。
勿論、コンクールが全てではなく、
普段の活動や、賞や優劣もない公演を楽しむことが、
彼らの第一でしょうが、
夏のこの時期は、いわば「ブラスの甲子園」、
燃え滾る熱い血を音に托して演奏する楽しみ、
これが、ザッツ・コンクールなのです。

前日に聴いた演奏は、
英国帰りのボケボケの神経でしたが、
耳は純粋でしたし、
自分が育った原風景のような音楽室で聴く、
彼らの演奏は、骨の髄まで染み渡る真実でした。

思い出しますね・・・
苦い思い出、良い思いで、暑さも寒さも、
すっぱさも・・・全てそこには染み付いている、
いわば格闘家のリングのような音楽室。
若き18歳の自分に重ねると、
純粋と言う耳も、うそつきロバの用に、
耳を折ってしまいたくなる衝動。
でも、目の前にいるのは、
私の耳より100万倍純真な目をした高校生。
切磋琢磨した数週間の結晶が音楽になります。

どうでしょう・・・。
知らない学校、生意気な高校生だったら、
「こら!ふざけんな、なんだこの演奏!」
なんて、いう事もありますし、
イラつきながら、「もう一回!もう一回!」
を繰り返し練習させることもあるのでしょう。
レベルが高い演奏になればなるほど、
脳内経験値が分泌させるアドレナリンは、
妥協を許さぬ思い出の音を、
再現させようとするのかも知れません。
でも、目の前の彼らを見ていると、
そんな言い分は陰を潜め、
純真な音に、サディスティックな指導欲をも、
誉めそやしwellcomeモードに変換です。
いやいや、これはお世辞ではなく、
よくやっている姿を褒めたい気持ちが、
優ってしまうのです。
大したアドバイスもないのですが、
「頑張ってね!」という一言で十分。

そして、次の日、コンクール。
私はいけませんでしたが、OB達が、
結果を教えてくれました。

決して特上ではないでしょうが、
評価され、足りない部分は私も納得。
公平な結果でした。
これをどう捉えるかは、現役の彼らの力ですが、
良い部分、ダメな部分も含め、
全てこれからの糧ですね。
手伝ったOBさん、そして、
新転任ながら環境の変化を音楽とともに、
乗り越えていった先生、
大変ご苦労様でした。
これから、もっと良くなりますね。

全てが年下の方々の世界になり、
寂しさと、自分の責任を認識し、
役目を果たせたかどうか疑問の残る私。
でも、また接点があれば、
この寂しさの溝を埋め、
自分の知識、経験を伝えたいと、
次回の機会に思いを馳せたのでした。

いや、御苦労!ではなく、
オメデトウ!!です。

雷モダン2008/08/11 13:27

名店の多い東京下町の中でも、
特別な繁華街である浅草。
この浅草に来年の舞台の打ち合わせ。

いつ来ても素晴らしい匂いの町、
薫る街でも、香りの町でもない、
この町の匂いは、昭和の東京人の方なら、
必ず懐古できる、ホコリの匂い。
朱塗りの雷門の両脇の、風神雷神に迎えられ、
参道でもある仲見世の、しかし裏道を歩く。
変装した物売りの御老人の愛嬌よろしい声、
水打つ商店の年季の入った御婦人の手、
どれもこれも、映画のコマ送りの様に、
目に焼きつく昭和の風情であるのだ。
ケミカルシューズが並んだ店、
飴色に変色した“商い中”札の喫茶店を
横目に足早に横丁を抜けてゆく。

英国のビクトリア朝時代に、
ウィーンの代名詞であるフランツ・ヨーゼフⅠ世、
プロイセンで言えば、ウィルヘルムⅠ世、Ⅱ世時代。
19世紀後半から20世紀の西欧文化と、
芸術全般が好きな私にとって、
浅草は特別な時代の同義語である。
明治から大正を、“モダン”という時代言葉に象徴され、
芸能から芸術までを大衆に導いた文化都市としての、
この町の華やかな喧騒は、
まさに西欧の誇り臭さがプンプンするのである。

人は言うでしょう、「何を仰る!」と。
しかし、鼻を患っている気付かぬ輩は、
西洋と東洋が融合した浅草文化を、
和洋折衷と一言で侮ることでしょう。
とんでもない匂い違いですな。
濁ってしまった筆洗いの水ではなく、
水の中で混じりあった、墨とパステルと油性色、
極上の手漉きの和紙で時代をそっと映せば、
きっと華やかなマーブリング模様が映し出され、
その作品こそが『大正モダン』という傑作なのです。
大正の極楽は、現代人が求める究極の過去かも知れず、
浅草の御隠居たちの笑顔と皺には、
その100数十年の歴史が刻まれているのです。

なんと素晴らしき浅草の喧騒!

と、暑苦しい思いを胸に5分程歩き、
老舗の味を守り、町の賑やかしを護る旦那と初対面。
浅草の町の映し鏡のような素晴らしい方でした。
夢をきっと叶えましょう。
来年の秋の大きな公演、始動いたします。
私の仕事は、山と町に恩返しです。

ランニング・、ハ~イ!2008/08/12 23:14

午前中から不安定な天気。
午後からポツポツ降り出すらしい、と聞いたが、
折りたたみ傘を持つ用意周到さがダメ・・・。
でも、もし振ってきたら、
嫌でも走り出さなくてはならないな、、、と、
思いながら、マイ・スタジオへ向かう。

そんな“走る&音楽”話の取材でした。
心拍数と運動の関係は重要で、
私が乗る自転車の世界などはアマチュアでも、
サイクルコンピューターは、
速度や距離を測ることばかりでなく、
心拍数の管理までするのです。
これにより、最適なギアの選択、
ペダリングが出来るわけで、
効率よく遠くへ、速く、となるわけです。

走る、と、音楽の関係をインタビューされ、
様々答えながら、、、というより、
様々な話をしながら最適な答えを探した、
と言うほうが正しいのかも知れませんな。
そんな事を話しているうち、
メトロノームは出るは、計算機で計算始めるは、と、
数字に拘って話し始めたのです。
が、考えるに、一定のビート感のあるロック、
ポップスに比べると、テンポ感はあれど、
そこまでストライドを管理できるような、
リズムの短調さはクラシックにはなく、
しかも、大事なのは、ストライドとテンポが
合う事ではなく、
いかに気持ちよく音楽により走れるか、
という事に話の焦点は移る・・・。

最後に話していたのは、
走りたくない人でも走りたくなる音楽・・・。
難しいですね、これ。
聴くだけで走りたくなる音、音楽。

音楽は、自然の描写や動物、人間の歩く走るを
音にした経緯は沢山あるでしょうが、
逆に、ランニング意欲を高めるとは、
なかなか難しいものです。
例えば、キューピー3分間クッキングのテーマで、
お腹が空く人とか、蚊取り線香のCMだけで、
どこか刺された気分で痒くなったり、、、
刺激によるそんな反射はあるのでしょうが、
走るのは難しいものですね。

しかし話しながら、そんな曲を創ったら良い、
との結論に至ったのだ。
これはアイデア満載の話だったので、
ちょっと書けないが、いやいや、
この運動企画は当たるよ!

タイトルは、
「運動会系クラシックのすすめ!」
防げメタボ!守れ健康!
~聴くだけで誰でも走れる、ヘルシー・クラシック~

決りだわ。満足。

昼過ぎには、ニューヨークで勉強する、
元弟子の I 君と飯+酒(昼からかい!!)
頑張ってますね、と感心ですが、
そろそろ大人の準備のようです。
でも、焦っても、大人なんかになれないし、
実は大人なんて面白くない!と、
意味不明の自虐的自覚アドバイスを与える。
まぁ、ゆっくりやっていきゃいいさ。
苦労した分は、取り返せる事に、
この世はなっているのだから。
いや、なってないと困るのだから。

と握手で別れ、日米会談終了でした。
また会おう!今度は仕事で会おうな!

捨てRIMO2008/08/14 23:52

呆れられるかも知れませんが、
放っておけない性格なのです。

ほら、例えば子供の頃、
学校の帰り道、涙目で鳴く捨てられた仔猫を、
ダンボールから抱き上げて帰った事ありますね。
古本屋さんで、昔愛読した書籍を、
それも店先の「どれでも100円コーナー」で
見つけてしまったなら、悲しい気分になり、
100円ならと買ってしまいたくなりますね。
それに、例えばスーパーで、
揃いで真っ直ぐなイケメン・キュウリの横に、
くねっと曲がった奴ばかり。
でも心が熱い、しかも安いキュウリ野郎だったら、
思わず、そいつらを我が家に招いてしまいたくなり、
イケメンそっちのけで、二山も買ったりしますね。

そんな気持ちと同じなのです。

先日、時々覗いているオークションサイトを、
ボウ~っと見ていた時のこと。
こいつを見つけた瞬間、
気がつくと、私は画面に語りかけていました。
「おまえ、、どうしたんだい?」と。
そいつは、グチャッとペチャンコにつぶれ、
どうしてそうなったのかは、簡単に想像できました。
出品者の説明は、思った通りで、
自家用車に乗りこんだ時、車内に入れ忘れ、
後輪でひいてしまった、ということです。

どうです、この写真の姿・・・。
放っておけないでしょう・・・

叩けば直ることを、私知っているのです。
だって、私は愛用の出動率90%のバッグを、
同じように車でひいてしまった経験があるからです。
車に乗り込む時に手荷が物多いと、
このバッグは大抵地面に一度置くのです。
そして乗り込み、エンジンonで出発・・・
「ガッコン」と、縁石を乗り上げたような上下感覚。
あっと思って横を見ると、バッグが無い!
この出品者も、10年前の私と全く同じことを、
してしまったに違いありません。

放っておけなかったのです・・・。
4時間叩くと、直るって知っているから。

他の人が落札したら、直してくれるでしょうか?
丁寧に4時間叩けば、さらに良いアジが出て、
愛着は、新品時の5倍になり、
使い込んだ風は、勝手に皆が褒めるのです。
そんな事を知らない人の手には渡せないと、

・・・落札してしまいました。
い、いえ!この状態ですから決して高くは無いです。

そんなことより、15個目のRIMOWA、
こんな哀れな子を引き取ることになるとは思わず、
でも、これは私の過去を引きずる懺悔であり、
悲しみを乗り越えた社会貢献でもあるのです。

解ってくれます、、、よね?
では、直ったらもう一度御紹介いたします。
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