オペレッタか喜歌劇か2007/02/03 23:49

日本ヨハン・シュトラウス協会における
音楽講座「ミカドあれこれ」

前日の深夜。
久し振りに、拡散していた知識や、
研究済みの内容、最近の楽譜からの発見事、
ブレンの学者と協働した過去の話、などなど、
まとめて資料をアタマに叩き込んみる。
ハンドアウト資料を作ってみると、
なかなか面白い構成になるものです。

実は、前日に音と映像の資料をチェックもして、
深夜は、VHSの頭出しと、販売されたDVDの
チャプターチェックだけのつもりだった。
「よし、これやって寝よう!」と思い、
8月1日のバクストン公演のDVDを見はじめたら、
止められなくなってしまった・・・。
普段は、終了公演を観たり聴いたりしないのと、
ミカド渡英公演の準備の大変さを思い出すのが怖く、
実は、全て通しで観たのは初めてでした。
安い言葉ですが、感動してしまった。

手前味噌、って言うのでしょうか。
いや、今読んだ方はそう思ったでしょう?

当日の朝の仕込みから、ゲネプロ、
また本番までと、考えると恐ろしい強行軍を
主催者側からは強いられたのですが、
よくやった!・・・と。
公演の成功は、今更言うまでもないのですが、
出演者とスタッフに対して、
労いの言葉が溢れるばかりでした。

あまり、書くと安っぽいのでやめますが、
良い公演です。
3月21日からは、多くの方に観て頂きたいと
思っています。
ちなみにDVDは、
全世界で100枚しか販売されていません。
生、で見ていただきたく思います。

当日は、快晴でポカポカ。
相変わらず心配するほどの暖冬に、
ありえない太陽光線と眩さの中、
テクテクと協会まで歩いてセッティング。
知識ある先輩の方々を目の前にして、
いろいろと話させていただきました。
3時間以上の会になり、参加の皆さんに、
感謝、感謝。
山本会長、ありがとうございました。

沢山の方々の名前が出るものでした。
感謝の意も込めて人物録を記しましょう。
会った事ある方、無い方、
日本人、英国人、その他たくさんありますが、
敬称略で失礼いたします。
これは、連想ゲーム。答えは「ミカド」です。

サリヴァン、ギルバート、メンデルスゾーン、
カート、森鴎外、ニーチェ、井上馨。
ロイド・ウェーバー、升本匡彦、品川弥次郎、
長門美保、伊藤道郎、伊藤熹朔、金子登。
新井潤美、岩崎徹、庄野潤三、倉田喜弘、
猪瀬直樹、永六輔、等等。

多感な雑感2007/02/05 09:35

なんとも暖かい毎日ではあるが、
今朝の冷え込みは3度まで下がってくれた。
「くれた」というのも変だが、
やはり冬が寒くなければ、
春の悦びがないので、
暖かい冬はあまり歓迎したくないのだ。

写真は近所の紅梅だが、
郵便局に行った時に出会ったのです。
あまりに美しい紅梅の樹木が5本並んでいたが、
辺りは、高度成長期を感ずる会社寮の敷地、
この対照がまた一層美しかったのです。

1月中旬に引っ越して3週間。
捨てさせなかったモノたちの執念も感じながら、
なんとか片付けはひと段落。
ようやく人間としての毎日の生活と、
家での仕事環境は落ち付きました。
しかし700mの引越しでも、
最寄駅が隣になり、御近所さんが変われば、
なにもかも変わるものです。

幼少より慣れ親しんだ実家は、駅からほぼ3分。
その後留学地ベルリンの家も、駅から3分、
さらに便利なバス利用では、目の前が停留所。
その後帰国して住んだ東府中の家は、5分で、
つい先日までの以前の家が7分。
700m越した現在。
どうがんばっても駅まで10分。
この速度出歩くと、足の甲が吊りそうなため、
アベレージ12分にしたいだが、
ホームまでは、不自由に回り込むため、
実際は15分の計算かもしれない。

私は忙しいせいというよりも、
性格上、行動が早い分、寸前まで動かないので、
駅に着く時間は、もうその後の逆算の賜物である。
早く余裕を持ちたいのだが、どうしても、
これができないのです。
遅刻は嫌だが、前倒しができないのです。
すると、この家を出る時間が5分早まった事は、
行動上大問題なのです。
府中の家に住んだときは、
駅からの徒歩距離の問題ではなく、
東京校外(市民の方失礼!)であると体が認識せず、、
仕事で連日群馬方面に出掛けただけで、
全身に蕁麻疹(ジンマシン)が出てしまった。
住環境と言うのは、精神的にも肉体的にも
大いに関係するものですな。

しかし、紅梅に目を奪われるまでになったので、
少しは周りに慣れたのだろうと思いますし、
視線の先には、日々新鮮な驚きもあるものです。
感謝、感謝!

3月21日からのミカド公演のプロデュースが
あまりに忙しく、2月より本格的に稽古も始まり、
さらに他の仕事の分重なり、ブログが書けても、
All Aboutの記事が更新できないでいます。
少しは楽しみにしていてくださる方があるだろうと、
心痛めた3週間でしたが、
引越しも済み、もう大丈夫なので、
徹夜仕事になってでも更新いします。
関係者の方々にはお詫びいたします。
また、ネット上では、
近々私の情報なども流れますので、
これはまた報告します。

やっと、新年が来たようです。
と、以上仕事が滞った言い訳の巻でした。

びんづけ油2007/02/06 23:58

いつもなら珈琲か、あえて言うなら、
西洋の薫りしかないはずのスタジオに、
ほのかに香るびんづけ油は、椿の香り。

ミカドでは、男性は鬘(カツラ)を被りますが、
これは初演時から地歌舞伎のお師匠さんが、
誂えたものをお借りして被っていました。
しかし、先代が亡くなったため、結い直したり、
修理したりする暇なく、公演で使っており、
ついぞ英国公演もそれで出掛けて行ったのですが、
次の5回公演はもたないと、途方に暮れていました。
見かねたヘアメイクのKさんが奮起してくださり、
本物の鬘屋さんを紹介してくださったのです。
普通でしたら、役者さんが鬘師さんを訪問し、
鉢の寸法を取って頂き、鬘合わせをするところ、
そんな習慣を落ち合わせていない我々、
西洋風日本人の為に、わざわざいらして下さいました。

江戸商人訛りにせっかちな喋り口調は、
私の耳には優しく、思わず口元緩みながら御挨拶。
しかし早々に奥に入れば、
1畳敷きの上に座ると、風呂敷をさっと広げ、
鬘師さんは、仕事の準備に入ります。
出てきたのは、私が痺れるモノばかりなり。
中でもまず目を奪われたのは、燻し銀に光るアルミ。
同じ様に模った鈍い金色の銅製もあります。
元来アルミフェチの私は、興味津々。
仕事忘れて、正座して仕事拝見です。
仕事の邪魔と解っていても、聞かずにいられぬ、
野次馬根性で、恐る恐る聞いてみる。
「それは一枚板だったのですか?」
「そうですよ、叩いてこうするのです」と、
柔らか口調の若手鬘師さんは、手を休めることなく、
答えてくれます。
「そちらは、どうやって使い分けるのですか?」
「これは、場所と容によってね・・」
おっと、仕事の邪魔をしちゃいけねぇ・・、
などと思いながらも楽しい!

羽二重を着け、八分方出来上がった鬘の原型を、
乗せてみると、、おう、なんてしっくり、ピッタリ。
歌手の方はウットリとした表情!
しかし頭は、”鉄腕アトム“だ・・・。
そんな事はどうでもよい!
合わなければ、すぐに叩き出したり、引っ込めたり。
リベットの穴空けの要領でその後に小さな釘を打ち、
頭落として、叩いて潰す。
いや、手際も良いが、無駄のない動作の美しいこと。

衣裳でもいえる事だが、
鬘は特に身分や仕事、年から暮らしまで現す。
立役(男性)の鬘の種類は、1000もあるらしい。
女性の600に比べると、なんと多いことよ。
それらを頭に叩き込んだ上で、
役柄に合った鬘を誂えていくのだから、
なんとも大変な仕事なんですね・・・。

銅の価格の高騰が最近の社会問題だが、
そんな心配しながら、アルミの釘を触らせてもらい、
しかも、その横には青光りした金属・・・
「鋼(ハガネ)ですか?」
「あぁ、そうです」と、強くてしなり、
これも丁度良い具合の鬘の形があるらしいのです。

驚いた。驚いた。
人も物も作業も技も、何もかも。

4人の合わせ終わった後の撤収がまた早い!
何も無かった様に、クルクルっと丸め。
金属片ひとつ残さず去っていきました。
付いて行きてぇ~、見て~っ、作るところ~!
と、思いながら背中を見送る私。
仕事人の背中に向かって頭を下げ、感謝です。
もちろんKさん、感謝、感謝。

トリスタン2007/02/08 23:32

私の丸の内での大切な人間関係を繋いでくれる、
丸ビル内の会員制ビジネスクラブ『東京21cクラブ』。
「日本創生」を中心テーマに掲げている
ビジネス交流会である。
ビジネスと音楽?日本創世と舞台芸術?
侮る無かれ、人が集う事は宝の山に居るようなもの。
毎日は伺えませんが、そこで出会う関係に、
音楽家としてだけでなく、社会人としても、
多くの事を教えさせられます。

昨日も舞台公演の広報の事で相談に行き、
クラブの真ん中に立つT氏と、
最近の報告やら、海外公演の四方山話も含めて、
意見交換をしたのです。
いろいろなアイデアや提案も頂き、
協力してくださる姿勢にまず感謝しながら、
将来を見据えたスキームの話に・・・。

携帯を利用しSNSが主流になる話は、
昨日の新聞報道でもありましたが、
SNSは言うまでもなく人と人の輪ですね。
では、その中で扱われるコンテンツ、情報に
エンタメはどのように関わっていけるかというと、
新しい可能性もありながら、非常に切ない現実もある。
携帯電話の性能は今や「電話」ではなく、
情報を受信発信する箱のとしてのスペックが、
とても重要になっていますね。
ワンセグも含め、大量の情報を一瞬で手に入れる、
いらない情報は一瞬で削除し、
必要と思われる情報も、何度か篩いにかけた上で、
さらに気に入ったものを保存していくのです。
情報の入手も早ければ、捨てる判断も早いもの。
インターネットでもそうですが、発信側は、
いかに必要だと思わせる情報を一瞬で流すか、
という事を大事にコンテンツに特化する。


どうなんでしょう。
10分、20分のクラシックは、
聴いてもらえるのでしょうか?
前奏演奏しているうちに「ブチッ!」、
ワーグナーなんて流れた日には、
重要な事言う前、、いや目覚める前に「ブチッ!」、
速さが重要な時代に逆行するようなクラシックは、
とてもこんな情報発信の世界にはついていけない。

予定空いている?とか、劇場へ行こう!とか、
CDより生!家から外にでなきゃ~!
なんていうテーマで吊るのは、もう昔の話。
これだったら、45分あるシンフォニーは、
サッカーの試合中継に勝てるのでしょうか?
なぜ大相撲はゴールデンタイムに?
なんて話で、困っていればよかったのだ。

今戦う相手は「時間」なのだ。
主流コンテンツは、滅法な速さで時間を操るので、
現代人は、時間の使い方が皆上手い。
無駄にダラダラと時間を過ごすのも好きだが、
脳の中に入り込む情報の速さが遅いものは、
絶対ダメなのである。
情報をすごい速さで判断して9割ゴミ箱だから、
どうすりゃいいのかな、舞台芸術は?

この尺度だと、9割9分ゴミ箱だな。
この敵と如何に戦うか、
瞬時にわかる特化したキラーコンテンツをのみ、
生き延びるのか・・。
益々一般化しないのである。

星に雪、酒に涙2007/02/10 23:07

いつものM大オケ2月中旬の合宿にGo!です。
栃木県の那須なのですが、
同じ時期に何年も連続で来ているので、
現地の気温や状況も解っていて、
身支度、荷物も真冬仕様にするのです。

今回初めて合宿に新幹線電車で行ったのですが、
なんとも快適!
新幹線は、1時間位の乗車なら苦も無く
一仕事する間もなく、瞬く間に到着ですし、
車で那須塩原駅まで迎えに来てもらったので、
これまた何も苦労なし。
いつもの所のつもりで来たのに、
雪は全く無く、降った痕跡さえ皆無。
日が落ちてもそこそこ温かく、
毎年、50cmはあるだろう氷柱が何本も
軒下に下がっている風景が美しいのに、
そんなもの1mmも下がって無いのである。

こんな違いを目の当たりにすると、
本当に暖冬なのだと実感しますね。

夜になれば、空は美しく、
見上げれば、満天の星空に感動いたしますが、
吐く息が白く凍るような冬ではないのですね。

学生達はいつものように、
酒を酌み交わして思い出を語り、
卒業していく仲間を見送るのである。
つい先日入ってきたと思っていた子達が、
早くも社会人になっていく様子は
寂しくもあり、楽しみでもありながら
多少心配でもあるのです。
毎年同じように送り出していると、
世の中の勝手な状勢の変化で、
世代によっては、就職に苦労したり、
社会に出てからも悩んだりするのですが、
例えどんな時代でも、
乗り越えて次の社会を創り出す大人になって
欲しいものと思います。

毎年、帰り際はちょっと感傷的になるのは、
学生も先生方もきっと同じでしょうが、
今回は、仕事で一足先に離れましたので、
笑って笑顔で「また会おう!」です。

みなさんおめでとう!

ショボショボ2007/02/12 18:26

那須からの帰りは新幹線で楽々ですが、
帰京のようで帰宅ではなく、
新宿から“スーパーあずさ”に乗って、
特急は、一路松本へ。

那須も帰りの日は少し吹雪く程で、
東北新幹線も速度落として走る。
松本の気温はどうだろう?とホームに下りれば、
なかなか肌寒く、ちょっと安心したのです。
相変わらず日曜に行って月曜帰り、
夕方に着いてすぐリハーサル、
その後食事に行って寝るペース、なので、
街を歩き回る余裕も無く外は真っ暗。
気温を感じ、空を見上げて星を見るのみ。
なんとも儚いのですが、これが仕事で仕方ない。

しかし、この松本の夜から始まった・・・
そう、花粉症。

酷いアレルギーの私は、2年前の春は、
もう地球に住むのを止めようと思った程。
昨年は量が少なくて良かったのですが、
今年はどうなんでしょうか?
弱い部分に出るといいますが、
大抵酷いのが、目、鼻、のどの順番です。
目の粘膜がやられると、痒くてたまらず、
しかもお酒を飲むと、アルコールが花粉エキスを
全身に回してくれるので、
目はショボショボで鼻も詰まり、のどもイガイガ。
堪りません・・・
これが4月下旬まで続くかと思うと、
やり切れませんね。

帰京して電車乗り見回すと、
3日前より、マスク率が格段に上がっている。
暑い夏の日に、凍れる冬の日を思い出せないように、
目の痒さでアレルギーを思い知るのです。

ミカドガガンボ!?2007/02/13 09:20

作者自身より、楽しい本を頂いた。

1885年春に、ロンドン・サヴォイ劇場で
喜歌劇「ミカド」が初演されて以来、
2年で672回の公演を果たし、
夏にはこの流行はアメリカに飛び火、
またヨーロッパ全土で初演の幕が上がった。
この結果、この流行にあやかろうと、
沢山のミカドの称号を配した新作物、
改名モノで溢れたわけである。
猪瀬直樹氏の名著「ミカドの肖像」の中で
既に書かれている、アメリカの“ミカド町”や
今でも遊ばれる“ミカドゲーム”の話以外にも、
実に多くの関連称号があるものだと、
最近聞いた話、調べた事から感心する次第。

例えば、アメリカでは蒸気機関車の車軸配列で、
C62などのCという前軸2主軸3従軸1の配列を
“パシフィック”と言うのに対し、
D51などDは、前軸1主軸4従軸1の配列で、
通称“ミカド”というのである。
これも、あきらかに時代的にミカドの流行から。
世界初のディスク型オルゴールが発明されて、
後に世界三大メーカーと言われる会社が
最初に作った大型のディスク式オルゴールの名は、
“ミカド”である。確認してはいないが、
この機械で最初に作られたディスクの曲も、
多分“ミカド”の有名曲なのであろう。

このほか、最近知ったものに、
ガラス食器や宝飾品で有名な、
フランスのバカラ社から出しているタンブラーで、
“ミカド”があるし、ボヘミアングラスにも、
“ミカド”がある。これはチェコ製のはずである。
高級ウエディングドレスの生地に使われる、
“ミカドサテン”は「帝サテン」でななく、
<Mikado-satin>の由来のはずだが、どんな歴史か?

こんなことに感心する折、一冊の本が届く。
題して『帝揚羽蝶 命名譚』。
ミカドアゲハの名前の由来にまつわる話を
多角度から考察し綴ったエッセイである。
エッセイと帯に書いてあったのだが、
これは学術書の類である事に間違いは無い。
書かれたのは既に10年前であるが、
長野県須坂に住まわれる今井彰氏で、
蝶の研究家として知られる方が、
ミカドの名前を持つこの蝶の由来の興味を持ち、
200ページに及ぶ本を刊行することになる。

読み進むと、ミカドアゲハの名前が、
オペラ『ミカド』に由来する話を言及している章で、
様々な昆虫と鳥類で、ミカドの名が使われている例を
出されているのだが、これがすごい。

ミカドトリバ
ミカドアリバチ
ミカドトックリバチ
ミカドガガンボ
ミカドフキバッタ
ミカドミンミン黄緑型
ミカドキジ ・・・
ちょっと不気味なのはさておき、これら全部は、
和名、学名ともミカドの名がついたもの。
他にも、例は数多あるのである。
哺乳類、両棲類、爬虫類、鳥類、魚類・・・
全部集めたら大変な数になるのでしょう。

勿論全てがオペラ「ミカド」に由来するわけも
無いとは思いますが、
1885年以降、この名前が世界のあちこちの分野で、
影響を及ぼし、名前の元は知らないが、
日本と東アジア、東洋的なイメージで、
本来の「ミカド」の意味も解らず命名したものも、
沢山あるだろうとは推測されますね。

草思社から出ています。
興味ある方は探してみてください。

の為、カンタービレ2007/02/14 00:40

久し振りに、かなり気合入りました。
カメラの前の1分間ショートプレゼンテーション。
笑顔で公演の情報と意義と楽しさを伝え、
お客様を劇場に誘うのだ。

喋りながらの指揮、、、いや、
曲の合い間のお話、、、と言うのか、
お喋りの息抜きの演奏(?)、と言った事は、
頻繁にやるので、何て事はないですし、
少し間違えても、舌が回らなくても誰も怒らない。
また、何分も話させてくれる講座とか、
休憩入れて2時間の講義の類は、
資料並べてCDやDVDを駆使しながら、
目と耳で伝えるので、これもやりやすい。
しかし、カメラの前で、
レンズから視線を外さずに、
自分の言葉で一度も間違えずに話すのは、
流石に、少し工夫が居るものです。

数年前、テレビ局のプロデューサーと飲んだ時に、
彼は、20秒で自分のことを語れないやつはダメ、
と言っていたのだが、私は、
「何をバカな事を」と、思ったものだ。
しかし、今では彼を正しいと思う。
5秒では無理かも知れないが、
20秒あれば十分なのかもしれない。
それ以上かかる者は10分時間を持っていても、
伝える事が出来ないのかも知れないとも思う。

今回は、豊島区ケーブルテレビでの公演案内。
15分番組の一部に入れてもらうので、
この喋りが命綱なのである。
以前公演でもお願いしたが、私の出演は今回初。
電話で収録日時決めた時には、「念入りに用意して!」
などと考えたが、所詮雑務にも追われ慌しい毎日、
走るように家を出て、電車の中で思考・・・熟睡。
更に乗り換えて10分の乗車でメモの走り書き。
「後は現地スタジオで!」と、また小走り。
「おはようございま~っす!」と共通の業界用語で
スタジオ入りすると、照明やカメラは、
完璧にセッティング完了状態。
名刺交換もままならぬうちに、
「では!録りましょうか!」と言われ困惑。
「あ、あの~、燕尾着ていいですか?」と俺。
「は?・・・エンビ・・・?」と皆。
私は、私らしくあるために燕尾服をわざわざ持参。
いや、衣裳もメイクも頼みたいさ、そりゃ!
でも、仕方ないじゃない、全部自らやらないと・・・
これ着ると、とっても落ち着くのですね。
恐るべし“作業着”とでも言うのでしょうか、
スーツよりタキシード、燕尾は普段着なのかな。

3行の走り書きのメモに目を通していると、
「行ってみましょうか、はい、5・4・3・・」
と、カウントダウン。
しかし、笑顔で「皆さんこんにちは!・・」と、私。
結局3テイク位は録ったでしょうかね。
なぜ何も見ないでスラスラ言えるのか、
自分でも解りませんが、神に感謝です。
持ち時間1分も完璧です。
これは、数えるのではなく歌う様に喋るのです。
4分の4テンポ60で15小節分ですので・・・
そう、これがカンタービレです。

公演間近まで1日2回、ほぼ毎日流れますから、
デジタル地上波なんて観てる方、
池袋周辺のケーブルTV観られる方、
指差して、笑ってやってくださいな。
それに、清和小学校の同級生や、
大塚中学の先輩後輩にも久し振りに御挨拶。

それもこれも、良い公演の為!
「ミカド」を皆さんに観て頂きたい一心なのです。

ブログっぽい。2007/02/15 03:59


何時に寝ても朝は7時半。

朝食後、机に向かいデスクワーク。
重要な譜面を見ながらメールチェック。
CD資料聴きながらスケジュールチェック。
同時にはできないので、正確にいうと、
非常に細かく交互に目と耳でチェック。
譜面は16小節先まで読んでおいて、
アタマで整理しながら、目はスケジュール帳。
でないと、時間が無いのである。

昼からNBAバレエ団のリハでしたが、
ロシアから振り付け家の先生来日し、初日。
私は、公演前は必ず何回も稽古見学し、
音のネタ集めて、音のきっかけを覚えて、
踊りを頭に叩き込み、家で踊ってみる・・・冗談。
通うのが大切。ダンサーと、音楽とのコミュです。
開始5分後。
のっけから、テンポのことや音出しの事を
細かに相談され面食らうが、
前にも一緒に公演やっている方なので、
向こうの心配性も知れば、
こちらの出方も良く知る深い中。
互いに不敵な笑いで交わす・・・戦闘開始か!
バレエは、最後まで振り付け家と音楽家の
高度な、いや低俗でもある鍔迫り合いなのだ。

バレエは、足の芸術。
つま先の神経から腰の位置まで、
使う筋肉ひとつ間違えば、ラインも変わり、
表現と美しさも変わってしまう。
先生に妥協は無いし、要求もとても厳しいのです。
手も大事。物言わぬバレエは、
心情の半分は手が喋り、心の動きの表現は、
指先にまで行き届く神経が必要です。

ダンサーは切磋琢磨しながら己の表現を追い、
躯を鍛え心も育て、身体表現を神に捧げる。
とても大変な世界で私の知る限り、
ここまで日々の制約を強いられる業種も珍しいが、
演奏家が最高の1音の為に毎日を費やす様に、
彼女達も、人間が人間以上に美しくなれる様に、
毎日余念無く、磨き上げます。
その苦労も商業的には利益をすぐには呼ばない。
しかし、毎日毎日、繰り返しの美学。

今日は車。
移動の車の中は、バレエの本番曲を聴いて、
暗譜に勤しむ。舞台を見て振りたいのです。
テンポは命綱なので、これも鼓動と同調させる。
焦らず移動して、夕方から丸ビルです。

定例の会に久し振りに参加して、勉強。
資本主義経済で動く世の中の変動を知るが、
毎回毎回驚きの連続で、メモも取れない。
知っています?カラーコードって。
QRコードは、携帯で写真撮る様に読み取り、
暗号を解読するもの。
これのカラー版。
緑、青、黒、赤の4色のマスの組み合わせで、
数億通りの数字列だし、
デザインも出来るし、油、水彩もOK。
感動的だった。これはコラボを考えよう。
しかも、後で質問したら、結構使用費は安い・・。
駐車場の開発会社から、転職情報の立ち上げ裏話、
証券から通信、銀行、マスコミ、会計士・・・。
様々の人の話と交流で、これからのヒントを得る。

全体は散会して、予定通り更に重要な会合。
M.S社社長と、クラブの中心人物4人での話し合い。
M.S社は、面白い試みで新しい音楽と人を
世に送り出しているのです。
そこに、さらに初の試みを持ちかける私。
「熱いですね~」と、感心される、、
どうなるのかは別だが、新しい出会いで、
人の輪が繋がり、面白い文化を創るのです。
盛り上がりまして(私だけ?)ここも散会。
帰宅、、、仕事だ・・・。

コンテンツに接して磨きを上げる人は、
まず身を育て、細部にわたって1点を見つめる。
社会を遠くから見る人は、大きなコンテンツの利用で、
沢山の人に降り注ぐ事を考える。
どちらも大事、どちらも必要。

寝よう・・もうすぐ起きなきゃ・・・。

口数の多い脚2007/02/16 23:10

今日は、稽古総見・・・というと、
本場所前の関取の稽古を見に行くようだが、
そうではないのだ。
バレエの話である。

自分がバレエを振る機会が多いからでもあるが、
私はバレエが大好きである。
語弊があるといけないので、付け加えておけば、
踊りの味方である、と言うべきところか。

普段はオペラ歌手との仕事、、、
(というのは、稽古が多いのだ。つまり稽古は
本番の100倍はやるので、これも含めて仕事)
が多いので、メロディーを声に出して歌い、
歌い方から、息継ぎ、音程、音色にまで文句、、、
(いや、文句ではないな。注文から、嘆願まで、
やり取りのレベルで5段階は、ある!)
そう、ディスカッションしながら(適切な日本語!)、
ましてや、言葉の発音や、
時に日本語のベルカントなんていう問題を抱えて
職務に勤しんでいるのである。
すると、言葉や音を発する事が大変であっても、
直接的な表現豊富な事に疲れてくるのである。

義太夫が語り、人形が動く人形浄瑠璃、
オヤジが喋り、動かぬ絵を想像が動かす紙芝居、
扇子手拭だけで、時代背景と身分も現す落語、
どれもこれも、表現には少し不自由であり、
見る側の想像力に挑戦してくるものだ。
小節を読めば、行間から感情が溢れ出し、
目を見えれば、写真の中の人物の半生が読みとれる。
舞台と言うのは、見る側を怠けさせてはいけず、
舞台上から挑戦し続けるものでなければいけない。
観客は想像で応え、さらに挑発を試みる。

私がバレエを好きな理由はそこなのです。
脚はメロディーであり、指は言葉。
引き締まった筋肉が強張れば、
緊張の高まりや、豪傑の高笑いが聴こえ、
静かに落ちる肩や顎の角度で、
堕天使の嘆きの嗚咽から、
押し殺した涙がこぼれる瞬間まで見え隠れする。
言葉や音楽が無くとも、踊りという表現は、
感情の発信を媒体する最古のコトバなのです。

NBAバレエ団、24日、25日の公演は、
ショピニアーナ、カルニバル、
バラの精、ダッタン人の踊り。
クラシックファンは、「知らな~い!」と、
そっぽを向き、オペラファンでも「何それ?」と、
興味なく言い放ちそうでもある。
どの曲も、踊りも、深く深く考えられており、
どの時代もディアギレフが創造した摩天楼のような、
舞台世界が広がるのである。

「カルニバルは、シューマンのピアノ曲「謝肉祭」を、
舞台作品用に1910年代に編曲したものだが、
摩訶不思議な若きシューマンの妄想劇を、
さも脳の中を見たかのような幻想劇に仕立て、
音楽もドラマも本質を突いている。
シューマンが見たら赤面する位な図星さである。
「バラの精」。ウェーバーの<舞踏への勧誘>だが、
背景をまったく置き換えて、
夢見る少女の想像上の恋人からの勧誘に、
今にも裸足で飛び出して行きそうな心の高鳴りを、
踊りに托していくのである。

来週も稽古に通い、
私の想像と、バレエのドラマを近づける。
作曲家の吐息をも見逃さないように譜面を読み、
振り付け家の意図を最大限解釈しながら、
ダンサーの事情も考慮して音楽作り。
サンプルのテンポが入ったCDはあるが、
こんなものは何の宛にもならない事は明白だ。
「バレエリュスの夕べ」
1から創りあげる、音楽とバレエの共闘なのである。
カウンター