オペラ鑑真東渡2016/12/23 23:36

丁度日取りが良く、
そして奈良で見ることの必要性もあり
日帰りで観に行ってきました。

友人が出演していたこともあり、
中国での初演を含めて話には訊いており、
来日引越し公演を楽しみ、、というより
興味津々でいたのです。

鑑真和尚の話ですので
知っている方も多かろうと思います。
私は、遠く高校生の頃に
映画の<天平の甍>を観ながら
壮大なスペクタクルに瞼を重くし、
ただただスクリーンを見つめた記憶。

しかも「この映画を観に行かないと一生の後悔」
というほど親に急かされて、
絆されながら映画館に向かった記憶・・・
まぁ鑑真さんの事は知らなければ
調べていただければいくらでも歴史は掴めます。

私が興味を持っていたのが、
中国江蘇から来るプロジェクトで、
歌手、スタッフ、そしてオーケストラ(!)
全てが来日です。
こんな事は今までないのです。

中国には素晴らしい伝統芸能と
舞台芸術が調和した京劇があり、
そして伝統楽器を配した管弦楽というものも
未だに根強い人気を博しており、
完全なる西洋スタイルのオペラは、
決して浸透しているわけではない。

一応断っておくが、
大都市北京には素晴らしい西洋音楽の音楽祭もあれば
日常的な西洋オーケストラの演奏もあり、
多くの都市部でもこれに倣っている文化はある。
この辺りはこの数十年の西洋化を考えれば
音楽に関しても想像に容易いのですある。

でも今回はオペラプロジェクトです!

オケも来る・・・。
凄いのですよこれが。

中国のオペラ歌手はすでに欧米で活躍しており、
圧倒的な声量や生まれ持った素養も含め、
日本の叶わない領域まで達した歌手が
とても多くいる事は皆さんも知っている通り。
オーケストラとなると、
実はそこまでの実力を兼ね備えた組織は多くない。
これはオケという集団の価値が簡単には
質の向上を伴わなかったりするからです。
ひとりひとり全員が演奏家であり、
日本などは子供の頃から西洋式の
専門教育を受けて数十年頑張っている事を考えると、
西洋音楽に対する概念も含めて、
ゆっくりゆっくり上昇するものであるからです。

オペラ<鑑真東渡>です。

結構な急斜面の八百屋舞台でした。
平ゴムを多用して明かりを宛て
空間と時間を遮断したり繋げたり、
今時のLEDの照明は、
彼らの感覚でさらに奇抜かつ華やかな
色艶のライティングでした。

そうスタッフも全部中国。
演出、衣装から照明、、、全て。

劇場上の不利を補うために
PA使用も辞さないのは賛成ですが、
なかなか難しい塩梅でもありますね。
音に対する感覚の差があるから、
一概に良し悪しはないのです。

オケの音は明らかにグローバルだった。

これはインターネット世代全体に言えますが
もうすでに30年前の東欧の音や
ロシアの音、方やアメリカ的な響きなど、
今の世界には皆無と言えるのです。

つまり知っているのです。
世界標準と言われる平均の考えも音も。

これを知る事で、個性的であり、
民族的もしくは宗教的な価値も含めて、
自分たちの個性を上書きしてしまうように、
世界中が同じ様な感覚になっていくのです。

どうでしょうね?
筆を洗った水の様にならなければ良いと
常日頃から思うものです。

オケのレベルが今日の公演の興味ではなく、
「中国のオペラプロジェクトが、
丸ごと日本にやって来た」という事実が、
歴史を動かしていると感じるのです。

去る事・・いつだったか。

東京芸大が新奏楽堂の落成記念の一環で
三木のオペラ<あだ>を上演した。
この時は美術学部の先生も含めて、
出演者スタッフ総芸大という偉業を成し遂げた。

未だに新国立劇場でもできていない
「自分の小屋で全て創る」という歴史だ。

日本だって海外に行くプロジェクトは
今だってたくさんあるし、
過去にはオペラ公演にオケも帯同して、
総日本人プロジャクトを敢行している。
でもこれは景気の良い時なのです。

中国の今を考えると、
やはり、だから来られたと思いますが、
来た事は事実であり、
生涯語られる中国西洋オペラ史の1ページ。

これを確認しに行きたかったのです。
そして鑑真だから、奈良公演に行かないと、
臨場感もないものだと思いました。

ちょっとぼやけば・・・
最後尾で始終喋りっぱなしの
音響と演出のスタッフの舞台へのダメ出し。
とか、、、
チューニングの時点でもう面白い
とか、、、
ありますよ、切りもないですよ。

でも中国の西洋オペラが
日本で公演をしたという事はやはりすごい。

鑑真という中日間に於ける題材を選んで
意識したところから良かったですし、
作曲の唐建平さんの音楽は素晴らしかった。
これは間違いなく感動的でした。

オペラ、、そうね、
あまりに純粋で潔白で鑑真とお釈迦様を思うと、
これはオラトリオかも知れないと感じ、
そして宗教を取り上げる題材からして、
中国のオペラに対して本気を感じます。

あまり考えて書くと、
批評になるし、
こうやって書いてしまう方がいい気がします。

国や民族ではなく、
舞台芸術を想う心が形になったことを
この目で確認できた事がとても嬉しいのでした。

中国のオペラ。
目が離せませんよ。
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