龍舌をまく2011/03/02 23:38

箏奏者木村玲子さんのCD収録、
ディレクターをさせて頂きました。
東京または関東近郊には様々な
コンサートホールがあるのですが、
催しに人が集まるホールが、
必ずしも最良の音響ではなく、
逆に立地条件から集客が難しくとも、
素晴らしい響きを持っている、
ホールがいくつもある。
本日のホールもそういう意味では、
演奏者や録音技師達が、
好んで録音使用するホールの1つ。
機材、録音環境(無雑音など)が
整ったスタジオで録る事は簡単。
でも自然音響のホールには、
聴く人が安心できる優しい響きが
あるものなのです。

本日は三木稔作品を合計3曲。
昼前にはテスト録音を開始して、
まずは箏に独奏チェロを合わせた
<しおさい>から録音。
チェロの藤森氏は日本を代表する
ソリストであり、
N響主席も務める同世代演奏者。
優しくも力強い彼のチェロの響きは
7つの海を支配する海神の如くです。
潮騒を超越した圧巻の演奏。
そして次は<秋の曲>。
原曲は箏と尺八ですが、
西洋楽器でも演奏できるように
譜面も出版されており、
今回は和+洋による録音。
仙台フィルオーボエ奏者の西沢氏は、
尺八の譜面を研究し、
西洋楽器での果敢アプローチ思考。
オーボエによる表現を駆使し、
よい特徴が生きる曲になりました。
2人とも有難うございました。

2曲終了時点ですでに夕方・・・。
お昼休憩もほんの束の間、
録音は続きました。
最後は13絃の箏(他の2曲は21絃)
2面による<箏双重>。
3楽章構成の音楽は
二面の箏が双生児のように
ピタリと寄り添いながらも、
これは2つの個性の競演であり、
2卵生双生児の成長ドラマのよう。
旧知の奏者山田明美さんは、
この曲の妹奏者役として、
盛んで新鮮な音楽を如何なく発揮、
双重の魂に華を添えました。

終了は21時を回っていました。
食事休憩30分程度で、
あっというまの9時間の録音。
ずっと弾き詰めの玲子さん、
演奏音色がぶれる事も殆どなく、
顔色も変えずに入魂の演奏を続ける。
それ以上の切磋琢磨を普段から
しているからこその神業です。
録音エンジニアの児島さんは、
邦楽器を良く知り、合理的且つ
建設的な意見で録音進行して下さり
良いチームワークで進みました。

今年の秋の発売予定ですが、
大変楽しみな録音になりました。
皆さんお疲れ様でした。
写真は柾目が美しい明美さんの
楽器の龍舌部分に奢られた、
精巧且つ贅沢な装飾です。
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