邦楽ガチラブ2010/01/13 16:14

2日前に続いての「音楽の街-狛江」の主催事業、
市役所ロビーコンサートでした。
年に2回のコンサート、今回は邦楽。
正月空けて2週間ですが、新年らしく、
「新春初夢コンサート」と題して、
箏と尺八の演奏を30分、聴いていただきました。
箏の座奏とは、正座して箏を弾くことですが、
最近は、椅子に座って弾くことも多く、
使用する楽器の台は、立奏台といわれます。
これでも、床から50センチの高さの楽器を、
屈んだ姿勢で弾くものですから、
高い所から覗かないと見え難いものです。
でも今日は工夫していただいて、
立って演奏できるように、更に高い楽器台。
この台は何と言うのでしょう?
背伸び台?いや、背伸びではない・・
伸身台?いや伸びない・・・、超立台?
はたまたジャンプ台・・これはスキーだ・・
ま、いずれにせよお客さんにとっては嬉しい、
演奏者の心遣いもありがたいのです。

新春らしく、名曲宮城道雄「春の海」に始まり、
聴きやすい曲も織り交ぜながら、
長沢勝利「萌春」で閉めての5曲。
ロビーコンサートは、音量の制限などもあり、
演奏楽器を工夫するのですが、
なんだ問題もなく、この季節に相応しい会でした。

演奏の渡辺正子さん、三塚幸彦さん、
ありがとうございました!心より感謝です。

古の音2010/01/14 23:23

義父が「こんなもの出て来たんだけど・・」と、
カシオの電子楽器を私のところに持ってきた。
しかし「壊れていて電池入れても動かない」、とも。
早速分解してみると、酸化による接点の汚れが、
バッテリーケース以外にもあちこちで見られたので、
丁寧にヤスリがけして、接点復活剤などで応急処置。
なんでもない、電源が入り数十年の眠りから醒める。

古い小型キーボードですが、大したモノです。
今では、子供用のおもちゃキーボードでも遊べる、
シーケンス機能を「オートプレイ」の名前で、
また音色を、アタック、ディレイ、ビブラート等、
自分好みに設定できる「A.D.S.R」機能。
しかし何とも素晴らしいのが、何故か計算機の機能。
さすが、カシオの製品ということなのですね。
一応定数計算や、%まで計算できるものです。
それぞれの鍵盤に番号が振ってあって、
これらを押してテンキーとするのですが、
そう考えると、この形はソロバンに見えなくも無い。
・・・。

半分オモチャかと思いながら見ていて、
一応メーカーの発売年数でも調べようかと思ったら、
この機械、古くてもたいして凄い!
名機、までは言いすぎかもしれませんが、
発売されたのが約30年前。
今時の卓上シンセと同機能のシンセサイザーが、
8畳間埋まる程の機械の塊だった時代に程近いのです。
そんな時代に、スイッチ1つで弾けて、
初心者でも電子鍵盤音を楽しめるように、
工夫を凝らした卓上電子ミニ鍵盤の開発には、
現代に通ずるカシオの精神が宿っているのですね。

しかも調べたら、現在でもエミュレーターとして、
パソコンで扱えるようになっています。
「エミュレーター」は、音色などをデジタル解析し、
ソフト化してパソコンで扱えるようにしたもの。
持ち歩かなくても、パソコンで音が出ますし、
実際に使用する頻度は極めて少なくても、
歴史的楽器としての音の保存が出来ています。
廃れてしまう文明が救われているのですから、
こういうデジタル化は、大いに賛成ですし、
劣化しないということは素晴らしいことです。

ただ、実際にこの機械を使うとなると、
音は単音しか出ませんし、小さいのですが、
しっかりとした重さもあり、
ううむ・・・ 使えますかなぁ~。

オカルト2010/01/15 23:23

今月末28日に藝大でオペラ<春琴抄>の本番。
そんなこともあり、ここ最近は、
週に2回、3回と、詰めながら稽古です。

原作である谷崎潤一郎「春琴抄」は、
昔から何度か読んでいたのだが、
この公演にあたり、秋から何度も読み返している。
彼の作品に対しての評を私がする立場ではないが、
この作品に流れる、静けさには、
何度読んでもドキドキと胸が鳴ります。
師匠春琴は、盲目であるがゆえ、
些細な音にも大変敏感でしょうから、
周りの者達は、環境音には相当気遣ったはず。
大きな商家で、商売の日常音はあるにせよ、
三弦の師匠として奥座敷に住まう彼女の
身の周りの音を想像してみても、
文章から聞こえて来るのは、
部屋の中では、絹、畳、鶯・・・。
加えるなら、冬には暖をとるための炭の弾ける音。
本来でしたら、人のざわめきや蝉の煩さ、
廊下の軋む音からガラズ戸の音、
ザワザワ、ミンミン、ギシギシ、ガラガラと、
煩いハズですが、文章からは全く聞こえてこない。

生活なんて、本来音に囲まれていて、
全くの静けさほど恐ろしい音はない。
でも、「春琴抄」には無駄な音は一切聞こえないのです。
この小説は、第三者による語りの手法であるが、
読んでいると、春琴と佐助の間に立ってしまい、
読んでいる私が恐縮して音を立てられない始末。
ドラマの中の音というのは面白いものです。

それゆえに、この静かな2人の間の音を奏でる、
オペラ作品としての<春琴抄>は、とても面白い。
稽古に来る弟子の高鳴る心臓の音、
丁稚に番頭達が遠くから覗き見る嘲笑音、
張り詰めた空気の音に、しんしんと降る雪の音、
増して、心の中に仕舞い込もうとする喜びの音に、
絶望と切望の崖っぷちに立つ心の音、
歓喜の口元の音と、感泣で涙が頬をつたう音・・・。
静かな春琴の部屋に流れる億千万の感情の音を
出し尽くして、聴いている方々の心に、
地を這う隙間風の音だけ残したいと思う今日です。

そんな私のお気に入りは、
ショパンを聴きながら「春琴抄」を読むこと。
静かなノクターンであっても、
脳内アドレナリンと最良の音量バランスに計る。
これ、お薦めというより、オカルトです。

宴酣2010/01/16 23:23

朝一番でアマチュアオケのリハーサル。
9時から東の方まで集まるのは大変ですが、
皆さんしっかり集まり、有意義な練習。
2月13日が公演ですので、そろそろ本腰。
狭い部屋ながら、充実した練習をこなす。
頑張りましょうね、皆さん。

土曜日に午前中からしっかり練習などすると、
一日がとても長いのですが、
有効に使える時間が長くありがたいものです。
・・・で、Vlaの学生N嶋とF井を誘い、
駅横の店で蕎麦でもと思ったのだが、
なぜか、販売機ボタンはビールを押していた。
カウンター越しの小母ちゃんも話に加わり、
四方山と、1時間強話しこみながら酒盛り。
2時間立って指揮していたのに、
どうして、ワザワザ立ちながら呑んでいるのか、
良く解らないが楽しく帰路・・・。

・・・ではなく、
今日は「めいとろ吹き初め&新年会」。
年に数回しか真面目に楽器触らないのですが、
この方たちとの親交は、デザートで言ったら別腹。
楽器を取りに大塚のスタジオに寄り、
そそくさと御茶ノ水に馳せ参じる。
吹き初めは佳境に入っており、
私も若干混ざり楽器を吹いてみる。
そのあと記念写真ですが、
午後から参加して下さる私と同年のM沢さんはじめ、
OBの方々、大変ありがたいものです。

さて、ここからが本題の新年会。
さんざん吹いた後の酒は美味い、とばかり、、、
いや旨く呑むための口実として楽器を吹いているのか。
とにかく、更に多くのOB諸氏、
他楽器の多数豪華ゲストに加えて、
華やかな名誉団員1号2号も加わり、
呑めや歌えやと、宴酣なのである!
1次会で澄むはずも無く、そのまま同人数で2次会。
こうして今年も、彼らとの楽しい時間が始まった。

宴会の写真も沢山あったのですが、
オゾマシイので、アップできない・・。
午後のキレイな写真のみどうぞ。

調弦2010/01/17 23:23

地元「音楽の街-狛江」でもお世話になっている、
渡辺先生主催の筝曲会の大きなコンサート。
一門による発表会形式とはいえ、
学校での指導も合わせて行っているので、
小学生から、高校生、大人も含めた公演。
洋楽をやっている人にはピンと来ないようですが、
邦楽器は、舞台に上がるまでの準備が大変。
特に箏は、楽器の調弦に時間を要します。
13本の弦ならまだしも、
17弦の箏には更に時間がかかり、
21本とか、25本なんて事になると、
物理的にも時間を取られます。
洋楽の転調は、調弦をそのままにして、
押さえる位置や頭の中で整理するだけで、
楽器に影響はないのですが、
邦楽の場合、演奏中に調子が変わると、
3弦(三味線)でも、調弦を変えますし、
箏となると、調子を変えるのに必要なだけ、
何本も変えていくので、
その為の演奏前の準備がまた大変です。

「箏屋さん」、という特殊な役職があります。
筝曲合奏などの公演で、
沢山の楽器を並べては、ガタツキがないか触り、
はたまた不測の事態に対処する楽器扱いの名人。
楽器は、立奏台(椅子で演奏するための台)に乗せ、
演奏するので、この台も運ばなくてはならず、
全てに渡って箏の楽器の面倒を見てくれる方です。
出演人数、楽器の台数が増えると、箏屋さんも増え、
曲の合間に、忍者の如く黒装束で入り、
無言のまま楽器を入れ替え演奏準備を整える。

昨日の演奏会、19曲にも及ぶ曲があり、
その度に全て編成を変えて出すので、
緞帳が閉まる中で作業をしているとはいえ、
大変な騒ぎになっているはずです。
舞台裏も含め、決して見せずに、
美しい部分だけを見せて、聞かせて行く、
大事な事ですが、主催は骨が折れますね。

楽しい演奏会でした。
泰子先生、正子先生お疲れ様でした。

70年代2010/01/18 23:23

朝から、市役所にて会議。
来年の市内の活動を整理する為の大事な会合は、
様々な意見をまとめながら、春まで調整し、
よい方向に行かれるようにするのです。
もう4年目も終わろうとしている活動は、
いろいろな転換期を迎えようとしているのです。

そして夕方からは<春琴抄>稽古。
キャストが少し足らないながらも、
通し稽古の一回目なのである。
作曲の三木先生も稽古に参加してくださった。
午後、車で早めに家を出ながら、
いろいろな話に花が咲きました。
一緒の敷地の二世帯住宅に住んでいますが、
意外に普段頻繁に会うことも無く、
仕事の連絡などもメールで行っているので、
こういう時にじっくり話ができます。
なにせ、<春琴抄>は、一作目のオペラ。
1970年代の懇親の仕事振りは、作品に表れますが、
本人から聞く話は興味深く、
過去の知らない歴史も紐解いてくださるので、
ありがたいものです。

稽古終わって夕食も共にし、更に様々なはなし。
<春琴抄>、調度私の年の作品。
こうして、オペラ作品が始まったのかと思い、
自分の人生に当てはめて考えてみると、
これからの人生が大変である事に気付きます。
これからなのですね、まだまだ・・・。

さて、1月28日が公演です。
この公演は、抜粋版のオペラ<春琴抄>。
入場無料なのですが、審査会なので、
学外の方は、観る事が出来ませんが悪しからず。
オペラの先生方皆さん興味津々にいらっしゃる、
大変な公演になる様子です。
あと10日間、皆さん頑張りましょう。

引篭もり2010/01/20 23:33

朝一で、大事な会議。
昼まで続くも時間切れで、また次回・・・。

急いで帰って、早朝からの作業の続き。
そう、朝から晩まで、何曲もの譜面を見る。
見なければならず、とにかく譜面作業。
譜面を見るのは仕事ですから、
調べることも、補作することも厭わず、
ましてや近き公演ならこの時間は大歓迎。
美しい譜面は、
音楽とと共に、素晴らしい風景となって、
脳裏に焼きつき、名場面と変化していくのです。

しかし、、、
汚すぎる譜面はどうしようもない・・・。
前にもここで書きましたが、
とある公演オケ譜が海外の劇場から届いた。
パンチで左隅に穴をあけて、
1パートをビニール紐でくくってあるのだから、
いろいろ覚悟はしていたけれども、
実際に詳細の点検に入ると、
手書きの譜面の余りの汚なさに、
イライラは募るばかりです。

この写真で解るでしょうか?
普通の4分の4拍子なのですが、段の最後が、
書ききれずに2拍で切れて、改行・・・。
次の段、1泊で切れて改行・・・
さらに次、今度は3泊で改行・・・。

えぇえぇ、誰だって写譜していたら、
上手く収まらずに左が余ったりします。
慣れていても、このレイアウトが難しい!
しかし!
この部分は曲が始まって多分3分後。
開始3分後でこの状態。
参ります。
演奏者は、こういう事で非常に疲労する。
演奏で神経を使うならばまだしも、
譜面を見る段階で疲労していたら、
埒があかないのです。

この譜面と指揮者用譜面(こいつがまた最悪)を
見比べながら、さらに確かな寸法(音楽のい間尺)の
音楽を聴いて確認していくのですが、
少し進んではため息、1曲クリアしては深呼吸。

とにかくイライラして事が進まない、
トホホの引き篭もりです。

ギネス2010/01/21 23:23

18日の夜23時にメールで注文して、
我が家に到着したのが今日21日の11時・・・。
どうしてこんなに迅速なんだ!

と、これは早いと言っても、
インターネットの国内の買い物ではない!
私が注文したのは、アメリカ、
しかもフロリダの出版社へ楽譜を注文。
今までにも、到着が早いことは有名で、
周りの業界人には、「中3日でくるよ」と、
便利さを吹聴していたのだが、
中3日どころか、中2日未満、
60時間で我が家に到着とはギネス級である。

どことは申しませんが、この出版は、
もう何年も前から利用しています。
一般的なオケ譜にはあまり適しているとは言えず、
どちらかと言えば、
スタンダードなドイツ、オーストリア作品などには、
ミスプリントなど信憑性がない場合が多いので、
馬鹿にされることもある出版社。
しかし在庫量の豊富さもさることながら、
レアな譜面がカタログに沢山あるのです。
英国、アメリカ関係の舞台作品に加え、
バレエのオケ譜セットも誠に便利。
また、さらにレアなところでは、
東欧系の新進作曲家、過去の有名作曲家でも、
クリティカル版(研究版)の最新があったりと、
1級の出版社とは違う味が楽しいのです。

私がいつも、「なるべく早い到着を望む!」と、
最後に書き加えるものだから、
競うように、すぐに手配するのかなぁ。
頑張るのは、スティーブかなぁ、
いや、マイケルかな・・ (妄想)
数万ある作品在庫ですから、
注文受けて発送まで、若干時間かかるでしょうに。
フロリダは、埼玉県あたりなのか?
実は、風呂利田という関東の町なのか?
そうか、刈増さんなのかもしれない・・・(さらに妄想)

しかし、譜面見る毎日なのに、
また新たな譜面が届いてしまったのだ。
どうしよう、、、整理をしなくてはいけない。

満身創痍2010/01/22 23:43

本日も<春琴抄>の稽古。
紆余曲折ありながらも、着実に前進。

毎回、稽古場の雰囲気でも写真に収めようと、
上野公演歩いている時は思うのですが、
稽古場に入ると、まさにそれどころではなく、
授業時間に縛られた限ある時間の有効利用で、
頭はフル稼働しているのです。
残念とは思いながらも・・今日もなし。

主役の2人には調度疲労が重なる時でもあり、
上手く乗り切って、来週を迎えていただきたい。
あとはGPがあり、そして公演です。

40年2010/01/23 23:23

「二十絃筝の40年過去と未来」と題された公演。
日本音楽集団の第198回(!)定期、
しっかり、聴いて参りました。

『日本音楽集団』、知っていますか?
創立されて半世紀を超え、
今も尚新しい邦楽の可能性を探求する団体です。
「現代邦楽」と称される音楽ジャンルがあります。
数百年の歴史から現代に脈々と続く、
古典邦楽分野に対して、新しい試み、
現代に於ける邦楽器の可能性などを探求する、
音楽ジャンルという意味でしょうか。

中国から伝来している多くの日本の楽器は、
導入された後、日本に相応しい進化はあったものの、
今でも進化を続けている楽器は少ないもの。
例えば、三味線の場合、
声に合う音色を求めて棹の太さは変化したが、
何処まで行っても絃は三本であり、
四本になることはありえないでしょう。
しかし、西洋音楽のヴァイオリンは、
最初、弦は3本しかなかった。
つまり、三味線だった。
これは極端な例ですが、中国の琵琶も、
伴奏楽器としての日本琵琶の原型ですが、
ソロ演奏中心で原型とは思えぬほど。
またそのお陰で進化も果たし、バチではなく、
爪をはめて演奏し、しかも音域も広く、
楽器としての機能美が備わっています。

日本楽器と古典音楽の価値と美しさは、
変わらぬ形、変わらぬ音という、
時間軸が極端に長い歴史も持ちながら、
その時代に作られる新しい音楽に対しては、
常に進化する奏法で賄ってきた。
そういった意味で、現在も古典邦楽の主流として、
受け継がれている13本の絃を持つ箏に対し、
可能性を探りながら、『二十絃筝』という、
7本も多い楽器を創作していったのは歴史上画期的。

そして40年を経たという時代の流れを鑑みる公演。
中国でも、韓国でも箏はありますが、
糸の数が違い、奏法さえ異なる事が多い。
また、二十絃筝(現代では通常21本)が、
今では広く使われるようになっており、
これは日本の影響であり、素晴らしい奏者と、
前例にない作品群を生み出していった作曲家の功績。
委嘱作品2曲を含む、9人の作曲家の作品は、
特色と時代の息吹が感じられ、
作曲家も演奏者も、皆二十絃箏と真剣に向かいあい、
様々な可能性を信じながら世に問うていった方々。

3部構成の公演、あまりに充実しすぎ。
素晴らしい公演だが、国立博物館、
またルーブル美術館を、開館と同時に入り、
閉館まで全て見て回った位のボリュームである。
しかし、4時間に渡る公演をしっかりと見届けた、
関係者、ファンは40年に思いを馳せていた。

日本音楽集団 公式HP
http://www.promusica.or.jp/
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