70%は、ボーダーライン2006/08/29 21:52

本日の朝日新聞朝刊26面文化総合の記事

「新国立劇場オペラ苦戦」
という、堂堂たる見出しだ。

オペラ、と書くのは、
新国には、バレエ部門と演劇の部門もあり、
オペラ部門と同じように、
それぞれ芸術監督が置かれながら運営されている。

恥ずかしい記事ではないのか。

内容詳細は割愛するが、要約すれば、
来年開館10年を迎える新国オペラの
チケット売り上げが、
4年前までは、順調に伸びながら84%だったのに対し、
3年前から次第に下がり、82%、75%、
昨年は70%と、確実に下がっている。
という、問題である。

この記事、原因をいくつかに絞り取材している。

新国側は、来日する、所謂海外オペラの影響といい、
同時期にぶつかると客足が遠のくと言う。

そうだろうか?

また、某音楽大学のオペラ研究所の方によれば、
公演を増やす「レパートリーシステム」の導入を、
と、促している。

それで解決するのだろうか?

そもそも、海外オペラは、高過ぎる。
いくらドミンゴが歌うからって、
メータが振るからって、
一晩に6万円ものチケットの値段をつけますか?

若者は、「家賃かよ!」って言うでしょうし、
6万円あれば、他のどんなにか素晴らしい娯楽が、
沢山楽しめるでしょう?
2万円の新国のチケットも安くは無いが、
いずれにせよ、これでは「オペラに通う」習慣は、
根付かないのである。

演劇、バレエはどうでしょう?
こんなランクのチケットがあるでしょうか?

応えはNoですね。

オペラだけが、いつまでも、こんな事やっているのです。
オペラを作る方々だけの問題ではなく、
まったく関係ない商売人までが、勝手に祭り立てて、
結果的にオペラ後進国にしています。

新国のファンといっても、
オペラ、演劇、バレエ公演等全部に出かけている方は、
大変少ないと思います。
演劇やバレエの公演に行き、あたりを見渡せば、
会場の大きさの違いに関係なく、
明らかな客層の違いに気づくはずです。

沢山言いたい事、山ほどありますが、
オペラを愛し、創造する舞台人として、
苦労がわかるので、無闇な発言もできません。

しかし、根本的に日本のオペラ界から、
抜け落ちてしまっている欠点や、歌手の教育問題、
制作やそれこそオペラ歌手の生活の問題に至まで、
真剣に考えないと、どうにもならないでしょうね。

文化は、第一次産業です。

種を植える前に土を作らないといけません。
土壌(観客、援護者)を丁寧に作り、
種(技術、人材)を蒔きます。
折角丁寧に日本の土壌を整えても、
市場が喜びそうな、外来種をと突然蒔いても、
付加がかかりすぎ、一時的な発芽で、
土地は痩せていく一方です。
土があり、種を蒔き、肥料やりすぎてもいけません。

戦後日本のオペラ界、
土を育てたのでしょうか?
上質な種を作り、蒔いては水をやり、
化学肥料に頼る事無く、じっくり育て、
収穫したらまた土を整えていく。

演劇界、バレエ界と、連携していかないと、
もっと酷いことになりかねません。

私が憂いても仕方ないのかもしれませんがね。

この写真
先日の公演、『こうもり』の一場面ですね。
2幕での、大晦日の祝宴シーン。
アイゼンシュタインと刑務所長のフランクです。

この二人は海外からのゲスト歌手、
こんな新国の深刻な劇場の現状なんて関せず。
駄洒落や馬鹿しあいで、おどけるワンシーンです。
皮肉にしては、痛烈な写真です。
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