歴史の部屋2016/07/10 23:58

先週からリハと公演の現代邦楽漬けの毎日で、
今週は加えて学校公演の連日でした。
帰京して次の日は同級生の箏曲の連中と一緒、
そして昨日はたんまりと国立劇場で、
秀逸な演奏家たちの様々なジャンルの
邦楽と現代音楽というコンサート。

新鮮で楽しい邦楽ですが、
さすがに2週間毎日浸かっておりますと、
西洋的な他の音を欲するようになるのでした。

そして今日。

ホームコンサートに呼ばれまして。
自宅から自転車でフラフラ出かけられる
近所の家なのですが正統いや真っ当クラシック音楽で
あるわけでした。

敢えて誰とか言わないのですが、
若々しく瑞々しさまで感じる若き音楽家で、
音大生でもあるのです。
素晴らしい才能溢れる演奏もさることながら、
その方が演奏の周りをキチンと整備されるのが
なおさら素晴らしく感じているのです。

自分で企画したり刷り物を誂えたりすることを
演奏と切り離した事務ではなく、
音楽との接点を考えながら進めるという点は
要するにプロデュースなのです。

演奏だけで他の事は一切我関せずという
演奏家はこの世にたくさんいるのですが、
自ら進んで企画したり準備したり、
多分そんなことに身を粉にしたりと、
いいことばかりではないのでしょうが、
でも演奏との関連を放っておかないという姿勢は、
とても大切なことですよね。

写真は演奏前のワンショットですが、
素晴らしいお家です。

私は身の引き締まる思いで、
実はこのお宅に入ることは楽しみでした。
豪華でもなければ最新ではないくても、
梁から壁、床の隅々までも、
あらゆる西洋音楽を聴きながら経年している。
見渡すと部屋中が上質な酵素で
発酵しているようにも見える訳です。
音楽人に有効な微生物は
食品ばかりではなくて音楽にもいる訳で、
その恵みを培養している部屋の居心地は、
畏れ多いものです。

ベルリンで最初に通された先生のレッスン室は
神々しくて社殿に招かれた錯覚でしたし、
その匂いまでもが自分を成長させると思い込みました。

ホームコンサート主催のその音大生の家だから
という事ではなく、
ここが大音楽家の息吹を引き継いでいる
場所であるからでありからです。

いや畏れ多い場所にいったなぁ・・・。

演奏、もちろん素晴らしいですし、
美味しいお茶にお菓子。
申し分ない振る舞いでもありました。

邦楽と洋楽の違いとか、
歴史とか概念とかではなくて、
真摯に音楽に向かう姿は美しいものなのです。

そうありたいと思うのでした。
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