現代的合理演奏2016/05/31 23:21

時間のある時にはとにかく舞台を見ますし、
観れば必ず何か得ると言うのが
私の信条でもあります。

普段から洋楽も邦楽も演奏するので、
どちらにも行くのですが、
幼少時から慣れ親しんでいる洋楽より、
身に沁みて知識と理解と勉強になるのは
どうしても邦楽です。
洋楽だって知らないことはたくさんあるし、
教会音楽やバロック以前の器楽作品も
私にとっては手付かずばかりです。
でも邦楽は違う意味で
古典から現代作品に至るまで、
全てが面白いのですね。

よく「聴き方を知りたい」
ってな方をお見受けしますが、
なんだっていいのですよ。
好きな楽器でも声でも見つけりゃ、
それが興味の入り口だと思います。

長唄でも現代邦楽でもいいのです、
聴いてみりゃ、観てみりゃナルホド!と
膝を打つ合点があるのが日本人なんですね。

私の聴き方は多分職業意識ですが、
アンサンブルなんです。

どのようにして演奏者が合わせているのか、
舞台の中の音楽はどうやって合わせていくのか。
具体的には箏曲アンサンブル30人が
どうして一糸乱れぬテンポ変化を可能とするか、
だったり・・・
歌舞伎を見ていても、
演者に対して義太夫と三味線の掛け合いが、
阿吽の呼吸で乱れないコツはなにかとか、
まぁそんなです・・・

なぜかと言うと、
邦楽には基本的に指揮者要らないから、
じゃどうして洋楽は要るのだろう?
という疑問にもなりますし、
意地悪を言えば、
だから邦楽はココまでしかできないな・・
なんて指揮者が居ない場合の
アンサンブルの利点と残念を
探し出したりするわけです。

指揮者が偉いわけではないのですが、
要るなら居るで必要とされる価値を
演奏者が感じないと立ってる意味がない。

そもそも真ん中で邪魔だからね・・(自爆)

洋楽の場合には、
10人程度の小編成でも指揮者が居た方が
精神的にも楽だという人が多いし、
特に稽古回数の少なかった場合や、
歌、器楽ソロとの合わせ物なんて、
要るのが普通だと思っています。

でも邦楽って違うのです。
指揮者を入れることは恥じる事でもあるのです。

逆に言えば、
入れないとできないと思われてしまう、
つまり演奏に不備があると思われるから、
指揮者は入れないでやるということもあります。

更に古の雅楽にも指揮者いないですからね。

とは言えアンサンブルの指示を送る手順は
洋楽と同じように決まっていて、
その点はアンサンブルの仕方に差はないのです。

邦楽は兎に角稽古積みます。
プロの団体と考えても、
洋楽の何倍もやるのではないでしょうか?
アンサンブルのタイミングを合わせるだけではなく、
音色なども含めて合わせて行くのですが、
これが最終的に一糸乱れぬ演奏に
繋がっていく理由でもあります。

現代邦楽と言われる
1960年代半ば以降の音楽の場合、
洋楽的な発想で合理的にテンポやリズムを
処理していく必要があり、
洋楽のように扱えない楽器の弱点除けば
その点では非常に現代人は上手いものです。

そりゃそうだ、日常生活は洋式なんだから。

50年間に亘って十分に進化した
演奏者の現代感覚と西洋合理的意識は、
もしかしたら西洋音楽の皆さん以上に、
邦楽の皆さん方は上手いかもしれない。
でも逆に真っ直ぐ過ぎるのではないかと、
思う事が多々有ります。

逆に洋楽演奏家は、
合理的な西洋論理が行き過ぎると
杓子定規な演奏になるのが分かっていて、
存分に枠から出て揺らしてしまいます。
これは邦楽古典的な間(ま)の掴み方と
似ていると思うところもあり、
その点において日本人演奏家は
上手いなぁと洋楽の方に思うのです。

邦楽合奏の面白みは、
西洋音楽的な合理が織りなす音の具象でありますが、
現代の西洋音楽の面白さはすでにそこには目標が無く、
音の処理やテンポや音量までもが、
空間的な音の自由さに回帰している気がします。

現代の邦楽合奏というものが見据える
目標や価値観というものは、
現代の音楽的な価値観からみれば、
すでに古き良き時代になっている気もいたします。

まだ私が働く分野がある事も発見したりして、
人の演奏をよく聴いてみる事は、
深くモノを考えるヒントになるモノです。

まだまだよくよく考えてみよう。

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