サティ万歳2016/05/15 23:55

  相変わらず慌ただしくも呑気な毎日を送っております。さて、東京芸大のイベント「サティとその時代」に行って参りました。
  今年が生誕150年のエリック・サティ。今年は俄かにあちらこちらで特集が組まれていて、心地いピアノ曲などが聴かれます。彼の音楽はフランス近代といっても、非常にシンプルで無駄な憶測もいらず、批評にブレないという素晴らしさも持ち合わせています。
 知っているようで知らないサティの魅力がたくさん詰まった1日でした。

 まさにサティ三昧の日でありまして、映画音楽から朗読劇という舞台音楽、そして最後は演奏会までありましたので、無料での芸大イベントは大盛況なのでした。


 これは第2ホールでの面白イベント。<ヴェクサシオン>というピアノ曲は840回の繰り返しの指定がされており、これを守ると18時間ほど掛かってしまいますが、4時間半で何回演奏ができるかという演奏参加もできる事前申し込み制のイベント。当日発表の豪華なゲストによる出演もありましたが、いろいろな方々が順番に弾くのがおかしい。しかし繰り返しているだけですが、聞こえ方は単純でも譜面は割とややこしい曲なのです。
こんな風に・・・。

「初見かよ!」って方も、何度か弾くうちに上手になってきたり、、、。そうか、そういう狙いで840回繰り返せっていう意味か・・など勝手に意味付けしたりする人もいるでしょうね。


 私の目当ては音楽喜劇「メデューサの罠」を見ることだったので、定員200名に恐れをなして早めに行ったのですが、すでに長蛇の列。これで開場30分前なのですから、サティ人気か無料万歳人気。はたまた芸大人気、物見遊山ってのもあるでしょうな。
 サティに関わらず、19世紀末から20世紀初頭のサロン音楽や舞台音楽は、現代では上演がされないという埋没の憂き目を見ている作品が多いので、今回なども貴重な機会です。浮世のネタや風刺も多くて、相当のインパクトや、現代でも通ずる普遍的なテーマなど扱わない限り、その筋の小作品は消えてしまいます。なにせ映画も満足にない、いや正確には映画がトーキー(音も再生)で観られるようになったのが、1927年ですので、その前のこのような舞台作品は最高の娯楽であり、上質も求められていました。そこで素晴らしい作曲家、台本作家、演出家など様々な方々が製作して喜ばれましたが、時代の流れとともに、埋没という時代の箪笥の隅に追いやられてしまったわけです。
 笑っちゃうほど一瞬の幕間の音楽のような音は、作品上演のプロデュースも演劇主体の主導でしょうし、演劇的に音楽がリンクしているようでどうにでもなる構成。この辺も時代ですが、音楽はしっかりサティ。でも今の時代だったら、この尺(音楽の長さ)は、ジングルと言われるほどの長さです。CMだと15秒な感じだし、歌謡曲なら、イントロ+エンディングかね。

 年表によれば、サティがストラヴィンスキーに会ったのが、1911年。ストラヴィンスキーも相当のサロン編成を作っていますが、今日の編成は面白い共通項。
 Vn - Vc - Cb - Cl. - Tp. - Tb. - Per.
打楽器は3人いましたが、マルチに整理すれば1人でできますな。この編成はストラヴィンスキーが作曲した 「兵士の物語」のファゴットとチェロを替えた編成。音域も編成の響きも似ているということですね。典型的サロンスタイルとも言えるのですが、時代の音と思うと少し研究したい課題でもあります・・・。


 第6ホール!耐震も含めての大きなリノベーションがされましたが、初めて行きました。
 以前は練習用ホールでしたが、完全に外部のお客様を意識した改築でした。奇抜とも思える天井ですが、よく見ると効率よくしかも安価ですね、さすが国立・・・。でも上下から入場が可能になったり、客席が段差ができて階段式で見やすくなったりと驚きました。

 このイベント自体そうですが、開かれた国立大学というイメージそのまま。芸大は美術学部が早くから先行して一般公開を意識していましたが、この5年の間に、音楽学部も相当変わりました。携わるスタッフは先生方も含めて大変なのでしょうが、素晴らしいことと思います。何気なく演奏している学生諸氏も大変素晴らしく、音と度胸の良さに今の日本の最先端を垣間見ます。
 サティを聴きに、観に行きましたが、芸大自体に非常に興味深くなってしまいました。今回は先生に教えていただいて出かけましたが、もっと出かけてみようと思った卒業生です。

 帰ったら、深夜にBSで、南ドイツ放送制作のサティの特集番組もやっていて、ずっとサティ三昧でした。この時代に傾倒する私は非常に触発され勉強にもなりました。
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