現代舞台2016/01/18 21:13

 時間があるときはとにかく何でも観ておきたいと思うもの。オペラ、バレエ然り、演劇も、能も文楽でもよいのです。でも時間がないと観に行かれない大衆的な芸能、寄席は一番のウェルカムでもあります。

 今日は新国立劇場の中劇場。この劇場はオペラ専用の大劇場、演劇に適した小劇場の真ん中に位置する音響や照明の演出を得意する劇場でもあります。廻り盆を有する主舞台と同じ大きさの舞台を上下と奥にも位置する4面舞台であり、セットをそのまま下降させられる大迫りまで考えると実に変幻自在に4
面分の舞台を動かせる機構を持っているのです。
 どうしてここまで造ったかと思うほどの劇場機能の反面、舞台をフル稼動させられる大道具や美術セットを持つ演目を作るとなると、莫大な経費の回収から数ヶ月のロングランをするミュージカルなどの所帯でなければ、宝のもちぐされとなりそうな場所でもあります。


 実はあまり過度な期待をせずに観に行ったのですが、あまりのスペクタル・・・というより食べられない量の食事やお酒をたんまり接待してくださるような過度演出に能がフル回転して舞台研究モードになってしまいました。
 現代と100年後の未来、そして江戸時代にタイムトリップしながら展開するお話です。細かな舞台評は相変わらず割愛したいと思いますが、照明に加えプロジェクションマッピングを駆使した光の演出の豪華絢爛さは、準備を考えただけで目が回りそう。客席は小学生から主演のナオトインティライミさんはじめ、出演者のファン、そして保護者から年配の方々までオールエイジです。そして私はいろいろな事を考えました。

 私が小学生の時、つまりもう45年も前(いつの間にこんなに経過した・・・と嘆く)に楽しみだったのは、團伊玖磨さんの指揮で様々な曲を奏でるオーケストラのポップスコンサートや、度肝を抜かれたSKDのラインダンスなど、つまり超アナログ(デジタルないからこんな比較言葉あ無かったが)でありながら揺るぎない日本の音楽とエンタメの歴史を背負った方々の濃い内容の上質の世界でした。
 耳に入るオーケストラの音や耳馴染みと聴き心地のよい中庸なテンポの音楽。・・・いやいや70年代初頭はすでにバリバリのハードロックもありましたが、連れて行ってもらっているので、教育上こんな世界が最大の子供エンタメなのですね。ま、とにかく将来を左右するような大印象を受けて育ち、以下省略の人生という事です。

 すごいですよDNA-SHARAKUを観に行かれている小学生。私の2つ隣にも5〜6歳のお子さんがいましたが、後半は立ち上がって目を輝かして見ていました。大音響で体を揺らす打ち込みの電子音楽から、8ビートで聴こえてくるメロディックなポップスの連続に加え、レーザーまで駆使しながらめまぐるしく変化する光の渦、どんだけ製作にかかったのかと現場の若手スタッフの睡眠時間まで心配してしまう動画の数々・・・。
 これを見ている子供達は、現代日本最先端のポップなデザインと視覚効果を駆使した演出を目の当たりにしながら、左脳に丁寧に収めながら育っていくのです。ううむ、どう考えてもすごい印象を残すでしょうね。
 そういうものですよ。過去のクラシック音楽年表だって、50年経てば古典からロマン派になり、50年で後期ロマン派と、歴史が動いていくのですからね。本当に私の感銘した45年前の記憶の衝動なんて、今の現代を考えてみると数万分の1の最先端だった気もする・・・。

ですから大事なのですね。

 どんなに技術が変わり演出方法が変わっても、デジタル化されたプログラムを準備すると複雑なセッティングも可能という時代になっても、言葉と音楽という絶対価値は揺るぎない。この価値と成果が全ての舞台芸術の根源であるとも思います。
 クラシックの歌手の生の声が一番素晴らしい訳ではなく、PAされる事を否定なんかしていたら、それこそ価値の履き違いも起こりそうな基準が現代です。それでも価値の基準はもっと根源にありますね。
 期待していなかったのは最初だけで、面白い展開と出演者の歌唱力に聞き惚れる所多数あり、感心しっぱなしでした。

 批評ではないのですが、場面の転換をどう行うかということは難しい問題ですね。今回のように時代も場所も目紛しく展開するドラマは特に大変ですが、必要最小限の美術セットをうまく利用していました。そうそう東京の後大阪、そして福岡にも行くので、それももちろん考えてのことですね。
 最近はテレビドラマでも思いますが、原作がアニメだったり漫画だったりします。自由なんですね場面の繋ぎ方が。このミュージカルも非常にポップで、ジャンルとしてはアニメ的なコマ割りがされていますが、すると何度も何度も転換します。暗転して音楽で繋いでまた暗転を繰り返すとページを捲る時間とと同じワクワクより、現実の出演者がハケたりするシェイクスピア演劇的な嘘も要求されるので、斬新で未来志向の演出とのギャップが難しい所です。
 オペラがオペレッタ、ミュージカルと大きく違うのは、オペラはどんな場面でも転換でも底辺に一貫した音楽上のドラマがあり、音楽ドラマの上に全ての演出は乗っかっていきます。こんな斬新な未来ミュージカルだったら、もっとオペラ的手法を取り入れながら転換して貰えたらもっと素晴らしいと思ったのは、出演者の素晴らしいソロも、ほとんど1コーラスで終了してしまう断片的ソングに散っていたから。
 ナオトインティライミさん。素晴らしいですよ。舞台初と思えない姿。歌手にはなかなかできませんが、何の違和感もなく主役を全う。以前から彼の超自然体と普段の会話の優しさが好きでしたが、演技などというリスキーなものは、パーソナリティを凌駕するものではないのだという証明のような、等身大の舞台上の姿がこのミュージカルにピッタリです!
 3時間20分のスペクタクル。小学生にこの時間はちょっと長いかも・・・。私は6時間のワーグナー時間までは平気。

 ううむ、批評めいてきた・・・やめよう。

 でもこうして人の舞台を観ると様々顧みて、また自分も見つめて回想したり凹んだり、上むいたり下みたりと脳はフル稼働します。
 
 
 帰りにはそんなことを考えにこういう通りが、セットではなく、LEDでもレーザーでもない蛍光灯の明かりで迎えてくれます。

 この創業52年の私と同い年のこのお店の焼き鳥は本当に美味しいから載せちゃえ!店内のお客さん、テレビ生放送の5人の話に聞き入ってました。はい私もまたいろいろ考えました。

 こういう道は奥に入ると素晴らしお店がたくさん。
開業9年目のワインバーでまだまだ考えました。
 この席の隣の方に数名の小母様方のグループがおりまして、そういう話もまた面白いのですが、井戸端芸能時事ハナシに興じる中、「ゲスの極み」と言いたいのだろうが、何度も「ゲスの悔やみ」と勘違いしているのもおかしい。

 なので場所を変えてさらに奥。
素敵なバーは24年目。どんなバーにも歴史あり、ハナシを聞いてくれるバーテンもまた粋なものです。

はいはい、、、帰ります、もう。

 と言いながら近所のお店で誕生日の女史のお祝い。今年20回目くらいの祝バースデーソング係を全うしました。

本当に長いわ、、、このブログ。
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